研究課題/領域番号 |
24560379
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
野見山 輝明 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (60274859)
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キーワード | 光蓄電池 / 銅酸化物 / 多孔体 / p型酸化物半導体 / 太陽電池 / 蓄電地 / 光電気化学 / 電極実装 |
研究概要 |
本研究の最終目標は「蓄電機能を持つ太陽電池:光蓄電池」の開発である。本課題ではp型半導体的性質を持ち,光によって陰イオンを脱離して光蓄電するp型光蓄電極の開発に取り組んできた。平成25年度は,前年度から引き続き 1) p型Cu2O多孔膜の形成技術の確立と 2) 導電性高分子ポリピロール(PPy)と銅酸化物多孔膜(CuxO)の複合化によるp型光蓄電性の評価を目的とした。以下に各項目の平成25年度の実績をまとめる。 1) CuxO多孔膜の形成技術の確立:前年度まではμサイズのCu2O粉末の焼結でCu2O多孔膜を得ていたが,より微細なメソポーラス構造とするために銅ナノ粒を用いた多孔膜の作製に取り組んだ。その結果,ナノポアを有しp型半導体的性質を持つ銅酸化物(CuxO)多孔膜の作製に成功した。 2) CuxO多孔膜にPPyを電着したCuxO-PPy(CP)複合膜電極を作製し,この光照射時の電位変化および光照射後の放電電流からp型光蓄電極として機能することが明らかになった。しかしながら,その光蓄電性はペアとなるn型光蓄電極TiO2-PANi(TP)複合膜よりも小さく1/10以下であった。この一因は,CuxO多孔膜とPPyが均一に複合化していないためと考えられる。 これらの実績に加え,pn相補ロッキングチェア型光蓄電池としてTPとCP複合膜を実装した光蓄電池を試作し,評価した結果,TPとCPを組み合わせることで大きな光蓄電電荷量が得られた。これによりpn相補ロッキングチェア型光蓄電池のコンセプトが有用であることが示された。 よって,平成26年度はCuxO-PPy複合膜が均一な複合体となるようにCuxO多孔膜の空隙率や平均孔径を調整し,PPyの電着の最適条件を見いだすこと,また,TP-CP光蓄電池の電解質組成の研究に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請当初の計画と比較して,研究の進捗は少し遅れており,平成25年度も達成数値目標であったp型光蓄電極で光蓄電量20 mC/cm2が達成できなかった。平成25年度は,銅酸化物多孔膜と導電性高分子を組み合わせて,高効率化を図る予定であったが,平成24年からより微細なナノポアを持つように銅酸化物多孔膜の形成方法を見直したため,この過程に遅れが生じた。このため,十分な高効率化の研究ができなかった。 しかしながら,平成26年度に予定していたpn相補ロッキングチェア型光蓄電池の試作と電解質の検討について,先回りして評価することができ,pn相補ロッキングチェア型光蓄電池のコンセプトが有用であることが確かめられたことは大きな成果である。 このような理由からやや遅れているとの判断を下した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はCuxO-PPy複合膜が均一な複合体となるように (1) CuxO多孔膜の空隙率や平均孔径を調整し,(2) PPyの電着の最適条件を見いだすこと,また,(3 )TP-CP光蓄電池の電解質組成の研究に取り組む予定である。これらの詳細を以下にまとめる。 (1) 銅ナノ粒子の分散液に高分子溶液を加え多孔化させているが,この調合比率を見直し,現状のナノポアからメソポアまで孔径を拡大し,多孔膜内部にPPyが成長できるようにする。 (2) 多孔度を変えたCuxO多孔膜に対して,PPyの電着条件(電着電位,電流)を変化させて,構造観察および光電気化学的測定を行い, CuxO多孔膜のp型半導体的性質とPPyの蓄電性が最適となる電着条件を見いだす。 (3) TPおよびCP両者の光蓄電性を両立する電解質として,硫酸ナトリウム水溶液を用いているが他の中性で硫酸イオンや過塩素酸イオンを含む電解質を試験して,最適な電解質を見いだし,平成25年度の目標値であった光蓄電量 20mC/cm2を実現する。 これらの課題克服の過程で実装の知見も得られると考えており,このような推進方策によって,当初の研究目的を実現する予定である。
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