研究課題/領域番号 |
24560383
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山本 寛 日本大学, 理工学部, 教授 (90130632)
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研究分担者 |
岩田 展幸 日本大学, 理工学部, 講師 (20328686)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 単層カーボンナノチューブ / カイラリティ / 自由電子レーザー / 化学気相成長 / 成長位置制御 |
研究概要 |
本研究の到達目標は、超短パルス・波長可変性という特徴を持った自由電子レーザー(FEL)を照射することによって、トップダウン手法により形成した電極間に、ただ一つのカイラリティをもった単層カーボンナノチューブ(SWNTs)をボトムアップ的に成長させるプロセスを開発ところにある。特に、成長中に照射するFEL波長の共鳴吸収効果により、特定のカイラリティを持つSWNTを選択的に成長させる新規プロセスを提案している。 筒状のグラフェンともいえるSWNTは様々な応用展開が期待されている。まず、第一段階として、我々は化学気相成長(Chemical Vapor Deposition: CVD)法におけるSWNT成長の問題点とその原因を明らかにし、高品質SWNT成長プロセスを開発した。今年度の成果として、SWNT成長前に存在するチャンバー内残留炭素がSWNTの品質低下をもたらすことを解明し、成長前にチャンバー内の炭素除去を行うことにより、ラマンスペクトルのG/Dピーク比が100程度の高品質SWNT成長に成功した。 次に、FEL照射効果に関する成果の一例を述べる。FEL未照射時には、直径は0.9~1.5nmにわたり分布し、金属SWNTのカイラリティが5種類、半導体SWNTのカイラリティが21種類確認され、金属と半導体SWNTが混在して成長していた。これに対し、800nmFEL照射時の場合、直径約1.1nmのSWNTのみ成長し、カイラリティは4種類の半導体に限られていた。今回の結果から判断し、FEL照射によりSWNTカイラリティ制御が可能であることが明確に実証できたと考えている。さらに、UV/Ozoneクリーナーを用いて親水処理を施した基板上だけにSWNTを成長させることにも成功し、基板表面処理によるSWNT成長位置制御と成長中FEL照射による半導体SWNTの強い選択成長を同時に実現することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単層カーボンナノチューブ(SWNTs)の物性を左右する直径と炭素結合方位(カイラル)の制御技術の確立は応用展開する上で急務の課題である。本研究の目的は、アルコール触媒気相成長(ACCVD)を用いるSWNTs成長中、特定の波長の高エネルギー極短パルスレーザ(自由電子レーザ:FEL)を照射することによって、照射光共鳴エネルギーに対応する所望のカイラルを持つSWNTsの成長を選択に促進できるプロセスを開発するところにある。 本年度の特筆すべき成果は、800nmのFEL照射を行うことにより、直径約1.1nmのSWNTのみACCVD成長させ、観測されたカイラリティは4種類の半導体に限られていたことを明らかにしたところにある。これは、最終目的のカイラリティ制御法の確立へ向けた第一段階にあり、着実に本研究の目標に向かって遂行されていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は大きく三つの検討課題を掲げて推進される。 1)照射FEL波長・パワーの検討(研究代表者:山本、分担者:岩田と連携研究者:早川が担当)を行う。まず、触媒微粒子径によってSWNTsの径を決定すれば、それに対応する固有励起エネルギーがカタウラ・プロットから決定される。例えば、約1.1nm径のSWNTsの半導体相は800nm近傍の波長の光を共鳴吸収することが予想される。次に、500nm、800nmならびに1500nm近傍の波長のFEL照射実験を行い、半導体・金属相の成長制御の可能性を検証する。この時、照射パワー・照射時間依存性についても検討する。 2)SWNTs径・照射FEL波長依存性の詳細な検討(分担者:岩田と連携研究者:早川が担当)を行う。具体的には、触媒微粒子径を減少し、SWNTsの径を1.0nm以下に小さく変化させると、固有励起エネルギーは相対的に高くなり、金属・半導体相はより明確に区別できるものと期待できる。さらに、照射FEL波長を500nm及び800nmを中心として、10nm程度の幅をもって系統的に変化させながらSWNTs成長実験を行い,同時に,照射パワー及び照射時間依存性について最適化条件を探る。現在、FELシステムは近赤外領域にある基本波を安定に出力しているが、非線形光学結晶を用いて大きな出力の高調波パルスレーザ(1500nmの3倍高調波としての 500nm)として機能させ、本申請研究では3倍高調波の約500nm付近のレーザを多用する予定である。 3)成長位置の制御プロセスの検討(研究代表者:山本と分担者:岩田が担当)をおこなう。特に、SWNT成長基板表面の親水性処理によって、特定の領域にのみに触媒を堆積させることによる効果を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「該当なし」
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