研究課題/領域番号 |
24560384
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
會澤 康治 金沢工業大学, 工学部, 教授 (40222450)
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研究分担者 |
小木 美恵子 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (50410288)
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キーワード | 圧電体 / レーザ / 衝撃波 / 電界 / 遺伝子導入 |
研究概要 |
これまでの研究からレーザエネルギーは黒色ゴムに含まれるカーボンブラック(CB)で吸収されることが分かっている.平成25年度はスパッタ装置を用いた黒鉛薄膜を素子に利用する計画であったが,CBを用いた方が簡便に期待した素子が作製できることから,今回はCBを用いた光吸収層と圧力保持のためのゴム層を分離した新たな「confined型」構造を提案し,その効果を実験的に検討した.検討した「confined型」構造は,(a)厚さ約0.07 mmの黒色エチレン・プロピレン(EPDM)ゴム(ダイコーゴム, 10 mm角)と厚さ約1 mmのポリエチレンテレフタレート(PET, 10 mm角)をエポキシ系接着剤で貼り付けた従来型,(b)CBを添加した接着剤でPETと厚さ0.07 mmの黒色エチレンプロピレンゴム(EPDM)を貼りあわせた構造,(c)CBを添加した接着剤で半透明シリコンゴム(厚さ0.04 mm)を貼りあわせた構造,の三種類である.実験結果から,CBを20 %添加した構造(b)では従来構造(a)と同様のピーク圧力が得られた.一方,CB添加量が2 %の場合にピーク圧力は低かった.以上から,CB添加量は黒色ゴム中のCB添加量と同じ程度(20%)が必要であることが分かった.また半透明シリコンゴムを用いた構造(c)の場合,平均ピーク圧力値は36.6 MPaであり,これは同日測定した従来構造(a)の平均ピーク圧力(37.4 MPa)に近く,圧力波強度の時間波形もほぼ同じであった.こられの結果から,CBを添加した接着層を用いても黒色ゴムを用いることなく従来と同様な応力波を形成できることが分かった. 前述の成果以外に本年度は,ターゲットの薄膜化実験,黒色ゴムを用いない新素子構造の提案と作製および評価,高速度カメラを用いた応力波伝搬現象の観察なども行い,本研究から派生した新たな知見も多く得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,①光吸収層をもつ圧電体の開発および②細胞腫による最適構造およびレーザ条件の決定を行うこと、を研究計画としていた. ①に関しては概要に記載した通り,カーボンブラックを用いた新規構造を提案し,その有効性を実証した.一方,計画に記載した圧電体への光吸収層の形成に関しては効果や有効性をまだ確認できていない.②に関しては4種類の細胞について実験を行い,細胞の状態(接着,浮遊)や細胞の種類によって細胞内への導入効率が異なることや必要なレーザ条件を明らかにできた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究において得られた新たな知見も含めたこれまでの研究成果をまとめ,細胞への物質導入におけるレーザ誘起衝撃波・電界パルス印加の有効性を実証する.前年度の研究成果からレーザ誘起衝撃波の発生に伴い培養液中に細胞剥離を誘起する流れが生じることが分かった.本研究目的の達成には流れの影響を無視できる環境での実験が必要である.そのため,流れを生じさせない実験環境を新たに構築し、その上で電界パルスを作用させた細胞の運動を圧力センサや高速度カメラを用いて明らかにする.同時に細胞毒性や物質導入の評価も行い,衝撃波・電界パルス同時印加の有効性を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞に関する評価実験が平成25年度に予定していた予算よりも少ない支出で実施できたために次年度使用額が発生した. 次年度使用額は主に最終年度の研究計画を確実に実施する上で必要な消耗品代に充てる.さらに成果発表に関する支出(論文投稿料や英文校閲代)が当初の予算額を上回る場合,この次年度使用額の一部を支払に充てる.
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