研究課題/領域番号 |
24560387
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 一関工業高等専門学校 |
研究代表者 |
佐々木 晋五 一関工業高等専門学校, 講師 (80225870)
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研究分担者 |
齊藤 伸 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50344700)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 磁性材料 / 薄膜材料 / グラニュラー構造 / 薄膜作製プロセス / スパッタリング |
研究概要 |
現在実用化されている垂直磁気記録ハードディスク(HD)媒体の記録層は,SiO2を代表とした酸化物を粒界に析出させたc面配向CoPt基コラム状磁性結晶粒の集合組織 (グラニュラ組織) からなる.HD媒体の高密度化および媒体ノイズの低減のため,グラニュラ型記録層の結晶粒径の微細化は必須である.一方,記録層の磁性粒の微細化は磁気記録特性の劣化をもたらす.この熱揺らぎの問題を唯一解決する方法が高い一軸結晶磁気異方性エネルギー(Ku)を持つ材料を磁性結晶粒に用いることである.本研究では,HD用垂直磁気記録媒体の高記録密度化のために高Ku磁性材料の開発およびその磁性材料のグラニュラ化を目的とする.また,高Kuグラニュラ材料は,次世代HD媒体に採用されることが有望視されている熱アシスト/マイクロ波アシスト型磁気記録を実現する基盤材料として重要である. 平成24年度は,金属-酸化物グラニュラ膜作製プロセスの高ガス圧成膜時の不純物ガスの分析とその効果,CoPt基合金の積層欠陥排除による高Ku化の検討を行った.その結果,以下のことがわかった.(1)4Paより高いスパッタガス圧で作製した膜は酸素組成が過剰であり,過剰酸素の供給源としてプロセス中のH2O不純物ガスのプラズマ中での解離の可能性が考えられる.(2) 高ガス圧成膜を積極的に利用することによって酸化物量を増量できる.(3)Coスパッタ薄膜の高Ku化の手法として基盤加熱成膜が有効であり,積層欠陥を排除し完全六方晶化してバルクのKuに匹敵する高い値が得られた.(4) CoPt合金薄膜中のPtの一部をRhに置換することによって積層欠陥を排除し10倍も高いKu値が得られた.さらに成果として, (2)を応用して,グラニュラ型記録層の成長初期部に高ガス圧成膜層を1nm挿入することによって磁気的交換結合を大幅に抑制できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属-酸化物グラニュラ膜の高ガス圧成膜プロセスの分析・検討と,CoPt基合金スパッタ膜の積層欠陥排除による高一軸磁気異方性エネルギー化の検討に関しては,予定通りの成果が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,研究項目1)「CoPt基合金の柱状成長結晶粒からなるグラニュラ組織の実現」,2)「CoPt基合金薄膜の高一軸磁気異方性エネルギー(Ku)化」の研究を行う.1)については,アモルファス柱状合金粒の加熱結晶化による作製を検討する.2)については,原子層毎の組成変調構造導入による高Ku化を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は新規設備の購入の必要はなく,研究費の半分以上を旅費や消耗品などに使用する. 旅費は,平成25年度は調査・研究および研究成果の発表のために使用する目的で計上している.実験は研究分担者の東北大学大学院工学研究科 電子工学専攻・齊藤准教授の研究室の保有する設備を利用して行うため,その旅費に使用する目的で研究打合せ旅費を計上している. 「その他」区分中の試料分析費は,薄膜の微細組織観察のため透過電子顕微鏡観察を学外の分析メーカに依頼するために計上している.さらに,計上した研究成果投稿料は学術論文や雑誌に成果を発表し,広く研究結果を発信するために使用する.発表する論文誌は,日本磁気学会誌, IEEE Transactions on Magnetics を考えている.
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