現在実用化されている垂直磁気記録ハードディスク(HD)媒体の記録層は,SiO2を代表とした酸化物を粒界に析出させたc面配向CoPt基コラム状磁性結晶粒の集合組織 (グラニュラ組織) からなる.HD媒体の高密度化および媒体ノイズの低減のため,グラニュラ型記録層の結晶粒径の微細化は必須である.一方,記録層の磁性粒の微細化は磁気記録特性の劣化をもたらす.この熱揺らぎの問題を唯一解決する方法が高い一軸結晶磁気異方性エネルギー(Ku)を持つ材料を磁性結晶粒に用いることである.本研究では,HD用垂直磁気記録媒体の高記録密度化のために高Ku磁性材料の開発およびその磁性材料のグラニュラ化を目的とする.また,高Kuグラニュラ材料は,次世代HD媒体に採用されることが有望視されている熱アシスト/マイクロ波アシスト型磁気記録を実現する基盤材料として重要である. 平成26年度は,「CoPt基合金の柱状成長結晶粒からなるグラニュラ組織の実現」に取り組んだ.このグラニュラ膜の実現に向けて,CoPt規則化合金による高Ku化,均一粒径かつ分離の良い柱状成長したグラニュラ組織の形成について検討を行った.その結果,以下のことがわかった.(1)Co80Pt20合金スパッタ膜において超格子線が観測された. m-D019型Co80Pt20の規則相が形成されていることが考えられる.(2)Co80Pt20合金スパッタ膜の原子積層構造を電子顕微鏡による HAADF観察を行った結果,膜厚方向にPtリッチ層/プア層の交互積層(原子層組成変調構造)が形成されていることがわかった(3)CoPt基合金-SiO2グラニュラ膜の断面TEM観察結果から,柱状成長様式の考察を行った.(4)CoPt基合金-SiO2グラニュラ膜の良好な柱状成長の評価において,柱状成長臨界膜厚を指標として,作製条件および組成の依存性を明らかにした.
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