研究課題/領域番号 |
24560388
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人電磁材料研究所 |
研究代表者 |
大沼 繁弘 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 特任研究員 (50142633)
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研究分担者 |
増本 博 東北大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50209459)
直江 正幸 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 主任研究員 (50533725)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薄膜・量子構造 / ナノグラニュラー構造 / フッ化物 / 高周波 |
研究概要 |
本課題の目的は,優れた高周波透磁率特性に必要な金属的磁化特性を維持しながら,従来の金属薄膜材料よりも比抵抗が極めて高い膜を開発することと,これのデバイス応用に関する基礎検討を行うことである. 24年度の計画には,①フッ化物絶縁層の検討,②磁性相材料の検討,③高周波電源の購入とスパッタ装置の改良,および④高抵抗フッ化物系グラニュラー軟磁性膜の作製の4項目を挙げた. ①については,ナノグラニュラー構造における絶縁層の絶縁性を追求したところ,バンドギャップが大きく,成膜状態での結晶性に優れる材料が良いことがわかり,フッ化カルシウムが現在検討した中で最も所望のフッ化物材料であることを見いだした.②については,コバルト基合金の高磁化もしくは高異方性を利用することで,GHz帯対応材料とすることができることがわかった.選ばれたフッ化物および磁性体を採用し,既存スパッタ装置でのナノグラニュラー薄膜の試作によって④の基礎検討を行い,より良い試料作製を行うための装置改造項目を抽出した.この検討結果に基づいて専用の試料作製装置を整備したことで,③も達成した. 以上の進捗に基づき,2件の学会発表および1件の特許出願を行うことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「9. 研究業績の概要」で述べたとおり,24年度は研究計画を100%達成することに成功しており,研究計画がおおむね順調に進展している.これは,研究の着手以前の蓄積データがあり,かつ研究組織メンバーの着想と努力が見事に成功したことによって,比較的短時間に成果を得ることができたことに因る.
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今後の研究の推進方策 |
「9. 研究業績の概要」で磁性体にはコバルト基合金が適していると述べたが,具体的には,現在のところ,優れた高周波磁気特性を得るために,高い磁化を得るにはCoFe合金,高い異方性を得るにはCoPd合金が適していることを見いだしてる.しかし,CoFeの異方性は低く,CoPdの磁化は小さい.また,CoやPdは高価な金属元素のため,これらを低減して行くことが必要である.つまり,現時点では二元系合金の評価に留まっているものの,三元系・四元系の合金評価にまで実験範囲を広げ,より高性能でありながら低コスト化に寄与する磁性材料を見いだすことが重要となってくる.そこで,今後は磁化を高める効果のあるFe,および磁化の低下が最小限で異方性を高める効果のあるNiの磁性卑金属を中心に添加することで,目的を達成する予定である. また,フッ化物については,バンドギャップと結晶性に優れるフッ化カルシウムが現時点で最も良いとしているが,未だ全ての材料について検討したわけではなく,バンドギャップと結晶性がそれぞれ比抵抗に及ぼす寄与度までは明確でない.バンドギャップのみで評価すれば,フッ化リチウムはフッ化カルシウムよりも大きなバンドギャップを有する.また,フッ化ストロンチウムとフッ化イットリウムも良好な結晶性を呈する可能性があると考えている.よって,これらもスパッタリングターゲットとして入手し,材料の試作を行う予定である. 25年度は,上記のとおり,材料組成・作製条件の最適化を行い,26年度に予定しているデバイス試作に繋げる予定である.しかし,デバイス試作については事前準備が必要であり,電磁界シミュレーションによる設計,およびフォトマスクなどの整備が必要であるので,これも25年度中に開始する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の大半を占めていた装置の整備が完了したため,次年度以降は,残額による試料作製に消費する原材料および消耗品の購入,および成果報告の費用に特化して使用する.
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