研究課題
本課題の目的は,優れた高周波透磁率特性に必要な金属的磁化特性を維持しながら,従来の金属薄膜材料よりも比抵抗が極めて高い膜を開発することと,これのデバイス応用に関する基礎検討を行うことである.平成26年度の計画には,①膜の強い一軸異方性(高周波化)の要因やその分散低減に関する検討,および②磁気デバイスの設計・試作・評価の2項目を挙げていた.平成25年度末までに課題として浮き彫りになっていた①について,透過電子顕微鏡(TEM)観察,X線極点図解析(XPFA),およびLLG方程式に基づく磁気特性の解析などを導入し,検討した.ナノグラニュラー膜も含まれるナノ磁性体の軟磁性は,磁性ナノ結晶がランダム配向することが前提として説明されてきたが,それに反して磁性ナノ結晶の形状および結晶方位に配向が見られることがTEM観察からわかった.また,XPFAにより,結晶配向は成膜における基板回転に依存して集中的に付与されており,これが強い一軸異方性の要因であるというモデルを立てるに至った.異方性分散についても,XPFAやX線回折による結晶性評価,および磁気特性の解析から,上記結晶配向に依存した角度分散,およびスパッタ条件に依存するナノスケールでの組成バラツキによる強度分散を見出した.これらは,ナノグラニュラー膜の研究において革新的な成果であり,今後の研究に寄与するであろう.以上に基づき,7件の論文発表(査読有り5件),および12件の学会発表(国際会議2件)を行った.②も行う予定であったが,当初の目的の一つであるナノグラニュラー軟磁性膜の高抵抗化のみならず高周波化も達成したため,その解析,即ち①を優先して研究を進めた.結果,上記のように多くの結果が得られたことから,3年間に渡る本研究助成の効果は目的以上に得られたと確信しているが,今後,機会を設けて本研究成果をデバイス応用にまで発展させたい.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (12件)
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