研究課題/領域番号 |
24560389
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
有沢 俊一 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (00354340)
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研究分担者 |
内山 哲治 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (10323784)
遠藤 和弘 金沢工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50356606)
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キーワード | 走査SQUID顕微鏡 / 磁束量子 / 超伝導 |
研究概要 |
超伝導体中では磁束が量子化され、その磁束量子は電流を流すことによりローレンツ力と同等の力を受けて移動することが知られている。近年、その磁束量子の移動が整流作用を示すことが見いだされた。申請者らは、くさび形などの試料を用い走査SQUID顕微鏡(SSM)によって実空間で一本一本の磁束量子を実空間で直接観察し、この効果による磁束量子の整流作用の過程を明らかにしようとしてきたが、この研究の中で薄膜中を流れる電流ベクトルを磁束量子と同時に測定する手法を編み出してきた。本研究はこの手法を利用してこれまでの観察を発展させ、局所的な電流測定を磁束測定と同時に行うことにより、結晶粒界付近における磁束量子の挙動を直接観察することを目的としている。 平成24年度においては、予備的な実験を進めた。これまで電流測定は粒界接合のない薄膜で行ってきたが、粒界の存在する薄膜に加工を施した上で電流分布と磁束量子測定の実験を行い、磁束と電流の相互作用の直接観察と可視化を実施した。さらにアンチドット付近に電流が流れた際の磁場分布の計算を行った。また、試料となる超伝導薄膜の合成における高品質化も併せて実施した。平成25年度においては、前年度に引き続き、粒界での磁束量子の挙動の観察、計算を進めた。またBi系超伝導薄膜の高品質化及び高配向化を進めた。一方、世界的なヘリウム枯渇により走査SQUID顕微鏡による実験が困難になっているが、走査SQUID顕微鏡のヘリウム消費を抑制するための装置改良に着手し、平成26年度に完成させる。これらの研究実施により、結晶粒界ジョセフソン接合への量子化磁束の進入過程の直接観察に成功し、また円形以外のアンチドット以外でも電流を評価する方法を示した。このように平成24・25年度においては、最終年度の計画へ至る上での重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における実験においては、液体ヘリウムの使用が不可欠であるが、平成25年度は24年度をも超えた世界的な供給不足により、液体ヘリウムの入手が非常に困難であった。このため、走査SQUID顕微鏡を稼働させての実験は必ずしも十分な回数を実施することはできなかった。しかし、計算、過去のデータの解析、試料作製のための薄膜調整を組み合わせて実施することによりデータをまとめ発表してきた。また、このヘリウム不足に対応するために走査SQUID顕微鏡の改良も行っている。これらにより次年度以降の実験の指針も数多く得ることができた。一方、走査SQUID顕微鏡による観察に用いる薄膜についても、より配向性を高めた超伝導薄膜の合成に成功している。 以上のような状況から、計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度のヘリウムの供給は依然として非常に厳しい状況であり、コストも大幅に上昇している。25年度からヘリウム消費を抑えるための装置改良を行っているが、これを完了させ、微細加工した薄膜を用いた測定を実施する予定である。 また、試料となる超伝導薄膜の高品質化、高配向化も併せて推進するとともに、計算を用いた検討も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続き25年度も世界的なヘリウム枯渇のため、液体ヘリウムの入手が困難であった。このため、走査SQUID顕微鏡を用いた測定に関する部分の実験を行う回数を減らす必要があった。この不足を補うため、試料となる薄膜の作製・加工および計算を行ってきたが、結果として次年度使用額が生じることとなった。 次年度使用額分に関しては、ヘリウム使用量を削減するための装置の改良などを行うことなどに使用し、26年度においても予測されるヘリウム不足に対応できる体制を整える計画である。
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