研究課題/領域番号 |
24560390
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
前田 辰郎 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 主任研究員 (40357984)
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研究分担者 |
安田 哲二 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 副研究部門長 (90220152)
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キーワード | 高移動度チャネル材料 / 窒化膜 / ゲートスタック / スパッタリング / 窒化ハフニウム |
研究概要 |
本研究の目的は、次世代チャネル材料として有望視されているGeのMOS構造作成技術において、金属性と絶縁性を兼ね備えたHfNxという窒化膜に着目し、“金属性HfN/絶縁性HfNx/Ge-MIS構造”というシンプルなゲートスタック構造の実現とその電気的なポテンシャルを検証することである。HfNxは、組成比1:1の金属性HfNと組成比3:4の絶縁性Hf3N4が知られており、窒素の組成の増加と共に金属性から絶縁性まで物性が変化するというユニークな電子物性を持っている。つまり、同一材料の窒素組成制御によりゲート電極/絶縁膜構造を一括して形成できる可能性がある。これまでHfNxの堆積条件の探索と最適化を行い、窒素流量比が増加するにつれて、抵抗率が指数関数的に増大し、数百マイクロオームの金属から、半導体さらには絶縁体に窒素流量のみで制御できる事を見出した。そして実際に金属性HfN/絶縁性HfNx/Ge-MIS構造MOS構造を作成し、電気的な評価に取り組んだ結果、絶縁性HfNxは、比誘電率が20以上のHigh-k材料であり、Geと良好な界面(界面準位密度Dit=mid×1012cm-2eV-1)を形成することを判明した。また、製作したGe-MIS構造は、酸素の混入が無く、500℃まで熱的に安定であることが判明し、その結果、窒素組成比の制御のみで、シンプルに、耐熱性の高い全窒化膜Ge-MIS構造を製作できることがわかった。得られた成果は、ヨーロッパ材料科学会議や応用物理学会等で速やかに外部発表を行い、高移動度チャネル材料向けの新しいコンセプトのゲート構造ということで注目されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、主に金属性及び絶縁性のHfN膜の形成条件の探索を行ったが、今年度はデバイス化プロセスの開発と、その評価を重点的に行った。その結果、単一金属Hfターゲットを用いた反応性DCマグネトロンスパッタリング法においてAr/N2流量比のみの変化で、今年度の目標としている金属性HfN(抵抗率349uΩ・cm)/絶縁性HfNx(Eg=2.9eV)/Ge-MIS構造を作製できることが明らかになった。このことから、現在までの達成度としては、概ね順調であると言える。さらに、絶縁性HfNxは、Si基板とGe基板両方の基板を用いたMOS構造において比誘電率が20以上のHigh-k材料である事も初めて明らかになった。また、Ge基板上の絶縁膜では界面準位密度Dit=mid×1012cm-2eV-1と極めて良好な界面を形成することから、目的としたゲートスタック構造が概ね実現できることがわかった。全体的には、当初計画よりも素子作製において大きく進展もあり、素子の電気的特性の評価の重要性が増したことから、電気的評価の高速性を高めるためのスイッチマトリクス装置を導入(前倒し支払い請求制度を利用)することより、研究のさらなる加速を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果として、目標とした“金属性HfN/絶縁性HfNx/Ge-MIS構造”そのものの作成には成功した。今後は、実用性の観点からその熱的な安定性の評価を中心に進める予定である。予備的な実験として製作したGe-MIS構造は、500℃まで熱的に安定であることがわかっているが、その要因を探る必要がある。熱安定性の劣化要因としては、絶縁膜中の酸素等の不純物や、金属膜中の結晶構造の変化など、様々な要因が考えられており、物理分析手法をと電気特性評価との相関を見出すことを検討している。HfNは金属は温度を上げると結晶生が改善し低抵抗化すると思われるが、ゲート金属としての信頼性、ばらつき等の観点からは、アモルファスの方が一般的に適している。それらの要因を系統的に検討を進め、さらなる熱安定性を得るための指針を示したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
小額につき次年度繰り越しとさせて頂いた。 次年度は、主に耐熱性等の物性評価と界面準位等の電気的な特性を詳細に評価し、高移動度チャネル材料に対する非酸化膜ゲートスタック構造の有用性を実証する。今年度後半に電気的評価の高速性を高めるためのスイッチマトリクス装置の導入で迅速なI-V,C-V等の電気的特性評価を行い、成膜条件へのフィードバックを進める。使用用途としては、主に消耗品として、ウエハー、ガス、その他経費として、デバイス試作のためのクリーンルーム使用料等の支出を見込んでいる。
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