研究課題/領域番号 |
24560393
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
齊藤 敦 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (70313567)
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キーワード | 超伝導バルク / 送信用フィルタ / マイクロ波帯 / 耐電力特性 / シミュレーション |
研究概要 |
平成25年度はマイクロ波帯送信用超伝導フィルタの性能向上を目標として, 1.最適な共振器形状の解析的,および実験的検討 2.5段フィルタの設計・作製・評価 を行った。まず,1.については,超伝導バルクを用いた共振器形状についてパッチ型とリング型を選択し,それぞれ設計と作製を行った。シミュレーションではどちらの共振器形状でもフィルタ特性を得られることが確認された。この結果を元にフィルタの作製・評価を行ったところ,実験的にも良好なフィルタ特性を得ることができた。これは,昨年度の独立型共振器と共振周波数調整用トリミング機構を適用した成果である。さらに,電流密度の解析結果からパッチ型の方が高い耐電力特性が得られることを予想し,実験的にもパッチ型の方がリング型より1.6倍高い41Wの耐電力特性を得ることができた。ただし,3段フィルタの目標である100Wの耐電力特性には至らなかった。一方で,同時並行して行った5段フィルタの周波数特性,および電流密度解析結果は,3段フィルタよりも高耐電力を示唆する結果となった。そこで,2.についてのパッチ型共振器5段フィルタを作製し,耐電力特性を行ったところ,107Wという世界最高性能となる耐電力特性を得ることに成功した。5段超伝導フィルタの耐電力特性が3段フィルタより高くなることは,一般的な薄膜フィルタとの傾向とは異なるが,この原因は今後解明すべき興味深い課題である。平成26年度はフィルタのさらなる多段化とともに,この原因についても究明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,1.3段フィルタを対象にして超伝導バルクフィルタの最適な形状を明らかにする。2.最適化された3段フィルタを作製し,100 W 以上の耐電力を示すか否かを明らかにする。3.多段(4~9段)共振器フィルタの最適なデザインを明らかにする。 4.段数(共振器数)の増加による耐電力低下に関する実験的な知見を得る。という4点を目標に計画した。 平成25年度は超伝導フィルタの高性能化を主として実施した。パッチ型,およびリング型3段フィルタの電流密度の解析結果からパッチ型の方が高い耐電力特性が得られることを予想し,実験的にもパッチ型の方がリング型より1.6倍高い41 W の耐電力特性を得ることができた。この結果から,共振器形状はパッチ型が有効であることを解析的にも実験的にも明らかにできた。したがって1.については達成できた。一方,3段フィルタの目標である100 W の耐電力特性には至らなかったが,2.についても達成できた。また,具体的な数値目標となる,フィルタ段数5段,挿入損失0.5 dB 以下,中心周波数5.0 GHz/帯域0.1±10%,スカート特性 10dB/5MHzを達成するフィルタの設計ができた。したがって,3.についても平成25年度までの計画は達成できた。この設計をもとにフィルタの試作を行った結果,明瞭なフィルタ特性を得ることができた。さらに,耐電力特性の評価を行った結果,本研究の最終目標である 100 W 以上の耐電力特性を得ることができた。多段化により耐電力特性が向上するか否かは,計画当初予想していた一般的な薄膜フィルタとの傾向とは異なるが,応用上非常に有効であると同時に物理的にも興味深いことである。したがって4.については,新しい知見の種を見出すことに成功した考えている。以上のことより,全体としておおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,これまでの結果を踏まえて更なる共振器の多段化とそのフィルタの耐電力特性を評価する。具体的には7段超伝導フィルタの設計を行う。またクロスカップリング(飛越結合)技術を用いて,フィルタ特性に減衰極を持たせることにより,さらに急峻なスカート特性が得られるような 4段フィルタを設計する。これにより少ない共振器数で効果的にスカート特性を向上できる。 最終的なスカート特性の目標を達成するための最適デザインの決定後,同フィルタを試作し,周波数特性,及び耐電力特性の評価を行う。以上の結果から,超伝導バルクを用いたフィルタの段数と耐電力特性の関係を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額 20,579 円が生じた理由は,旅費を大幅に軽減できたためであり,研究の進行に関する問題はないと考えている。 平成26年度は,当初計画と上記次年度使用額を合わせて,物品費350,000円,旅費200,000円,謝金150,579円,その他20,000円として計画している。
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