研究課題/領域番号 |
24560394
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
杉田 龍二 茨城大学, 工学部, 教授 (20292477)
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研究分担者 |
小峰 啓史 茨城大学, 工学部, 准教授 (90361287)
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キーワード | ハードディスク / 磁気転写 / エネルギーアシスト記録 / 瓦記録 / 磁区構造 / 層間交換相互作用 |
研究概要 |
エネルギーアシスト及び瓦記録方式等の次世代ハードディスクに対応できる超高速サーボ信号記録法を実現すべく研究を推進し,本年度は以下の成果を得た. 1.磁気転写法を次世代ハードディスクに対応できる性能にするためには,ノイズ低減が重要である.平成25年度は転写されたビット間の磁化遷移領域の直線性に起因するトランジションノイズに着目して,転写実験及びマイクロマグネティックシミュレーションを推進した.その結果,トランジションノイズの観点からは,ビット転写法よりもエッジ転写法が優れていることがわかった.また,スレーブ媒体の特性とトランジションノイズとの関連についても検討した. 2.マスター媒体用磁性層としては,高い垂直磁気異方性を有する膜厚10 nm前後のCoPt薄膜が適している.そこで,今回は膜厚10 nm以下の極薄CoPt膜を作製して,その磁気特性,磁区構造及び経時変化を調べた.その結果,10 nm以下では不規則磁区構造が主となり,経時変化によって不規則磁区構造がより強調されることが明らかになった.また,また膜厚が薄いほど磁区サイズ及び保磁力は大きくなった. 3.転写特性はスレーブ媒体の特性に大きく依存する.そこで,次世代ハードディスクの記録層を想定した高い垂直磁気異方性と高保磁力を有する膜の作製検討を実施した.CoCrPt-SiO2ターゲット及びFePt-Cターゲットを用いてスパッタリング法による成膜を行ったが,まだ望ましい膜は得られていない. 4.次世代ハードディスク用記録層としては積層構造媒体が適しているものと考えられている.そこで,積層構造媒体の磁気特性と磁区構造について,層間の磁気的相互作用に着目して,実験とマイクロマグネティックシミュレーションを用いて検討した.その結果,静磁相互作用が大きな影響を及ぼしていることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の転写特性を飛躍的に向上させエネルギーアシスト及び瓦記録方式ハードディスクへの超高速サーボ信号記録法を実現する,という本研究の最終目的に対して,概ね順調に進展していると考えられる.以下に概略を説明する. 1.マスター媒体用単層垂直磁気異方性膜及び積層膜の作製,これらをのマスター媒体を用たハードディスクへの転写実験実施:トランジションノイズに着目して,転写実験及びマイクロマグネティックシミュレーションを推進し,ハードディスクの記録層に印加される記録磁場が面内成分を多く含むほどトランジションノイズが低くなることを明らかにした. 2.積層マスター媒体用高垂直磁気異方性薄膜の検討:膜厚10 nm以下の極薄CoPt膜を作製して,その磁気特性,磁区構造及び経時変化を調べ,10 nm以下の垂直磁気異方性膜では磁区構造は不規則磁区構造が主となり,膜厚が薄いほど磁区サイズ及び保磁力が大きくなることを明らかにした.また,経時変化によって不規則磁区構造がより強調されることを明らかにした. 3.エネルギーアシスト記録対応あるいは瓦記録対応のハードディスクの記録層を想定した磁性膜の作製検討:CoCrPt-SiO2ターゲット及びFePt-Cターゲットを用いてスパッタリング法による成膜を行ったが,まだ望ましい膜は得られていない. 4.積層構造媒体への転写に関するマイクロマグネティックシミュレーション解析:種々の積層構造媒体を想定して転写シミュレーションを行い,それぞれの要因と転写特性との関連を明らかにした.また,上記研究実績の概要1に記載したようなトランジションノイズについての知見も得られた.さらに,積層構造媒体の磁気特性と磁区構造についても,実験とマイクロマグネティックシミュレーションを用いて検討し,層間相互作用として,交換相互作用ばかりでなく静磁相互作用も大きな要因になっていることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は以下に示す内容の研究を計画している. 1. 磁気転写された信号のトランジションノイズに着目した検討を行う.1 Tbit/inch2以上の記録密度を達成するためには,直線的なトランジションを形成することが要求される.そこで,磁気特性や構造の異なるスレーブ媒体に対する転写実験を実施して,転写されたスレーブ媒体を磁気力顕微鏡を用いて観察し,トランジションの状態を解析する.さらに,マイクロマグネティックシミュレーションを行い,実験結果と照らし合わせつつ検討を進める. 2. マスター媒体用磁性層として適していると考えられる高垂直磁気異方性CoPt膜に関する検討を行う.平成25年度は,膜厚10 nm以下の極薄CoPt膜の磁気特性,磁区構造及び経時変化について明らかにしたが,平成26年度は,カー効果測定装置,X線光電子分光法なども用いて,より詳細に検討する.これにより,さらに優れた垂直磁気異方性膜を得ることを目標とする. 3.転写特性を向上させるためには,媒体に磁場が印加された際の磁化反転プロセスの理解が必須である.そのためには,磁化の時間経過に伴う振る舞いをマイクロマグネティックシミュレーションで解析することが有効である.そこで,単層膜及び積層構造膜における磁化変化をマイクロマグネティックシミュレーションを用いて詳細に検討する. 4. 次世代ハードディスク用記録層考えられている積層構造媒体における層間相互作用について実験とマイクロマグネティックシミュレーションを用いて検討する.転写特性は,積層構造媒体における各層の層厚,垂直磁気異方性,磁性粒子間交換相互作用,層間相互作用などに大きく依存する.そこで,組成や膜厚,構造などを変えて積層膜をスパッタリング法により作製し,その磁気特性や磁区構造を調べる.また,この実験に対応したマイクロマグネティックシミュレーションを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定物品が安価に購入できたため. 平成26年度支払請求額とともに,当初予定通り物品購入に充てる.
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