エネルギーアシスト及び瓦記録方式などの次世代ハードディスクに対応できる超高速サーボ信号記録法を実現すべく研究を推進し,本年度は以下の成果を得た. 1. 1 Tbit/inch2以上の記録密度を達成するためには,所望の位置に直線的なトランジションを形成することが要求される.磁気特性や構造の異なるスレーブ媒体に対して信号を転写し,磁気力顕微鏡を用いてトランジションの状態を解析した.その結果,スレーブ媒体の磁性層構造にかかわらず,転写磁場が面内成分を多く含むほど直線的なトランジションが得られることが明らかになった.また,トランジションノイズには消磁ドメイン構造が反映されていた. 2. マスター媒体用磁性層として適している高垂直磁気異方性CoPt膜に関する検討を行った.膜厚10 nm未満のCoPt膜の消磁磁区サイズは磁場印加方向に依存し,垂直印加の場合のサイズは面内印加に比べて大きいことが明らかになった. 3. 転写特性を向上させるためには,媒体に磁場が印加された際の磁化反転プロセスの理解が必須であるため,磁化の動的振る舞いをシミュレーションにより解析した.また,層厚比の異なる積層構造記録媒体における層間交換相互作用の最適値を明らかにした. 4. 次世代ハードディスク用記録層は積層構造を有する可能性が高い.そこで,組成や膜厚,構造,中間非磁性層厚などを変えて積層膜をスパッタリング法により作製し,その磁気特性や磁区構造を調べた.また,この実験に対応したマイクロマグネティックシミュレーションを行った.その結果,これらの種々のパラメータが磁気特性及びトランジションの直線性に及ぼす影響が明らかになった.
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