研究課題/領域番号 |
24560396
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
荘司 郁夫 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (00323329)
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研究分担者 |
小山 真司 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (70414109)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 樹脂実装 / パワー半導体 / 異相界面 |
研究実績の概要 |
本研究では、電気自動車用パワーデバイスとして期待されるSiCパワー半導体モジュールの高効率・高信頼性化の鍵を握る異相(高分子樹脂/金属)界面を研究対象として、異相界面のマクロ特性出現機構を解明し、高機能相界面を創製することを目的とする。 初年度(平成24年度)は、高分子樹脂そのものの物性値を調査することを目的として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を母材とする標準材を作製して、硬化物の機械的特性に及ぼす充填剤(フィラー:二酸化珪素)添加量の影響について調査した。 2年目(平成25年度)は、樹脂材の機械的特性に及ぼすフィラーのカップリング処理の影響について調査し、弾性率及び引張強度は増加傾向を示すが高温において破断ひずみは減少傾向を示すこと、フィラー/樹脂界面の強化によりフィラーの剥離は抑制されるがガラス転移温度以上の温度域ではその効果が低下すること、樹脂材の緩和挙動が変化し貯蔵弾性率の緩和開始時間がより長時間側にシフトすることを明らかにした。また、銅板上に樹脂材の円柱状小突起を作製して、せん断試験を行う手法を開発した。 3年目(平成26年度)は、樹脂材の疲労特性調査及び樹脂/銅界面の密着強度に及ぼすカップリング処理の影響を調査した。その成果として、樹脂材の室温における疲労特性は、フィラー添加によるクラック進展抑制効果およびカップリング処理による樹脂/フィラー界面の密着力の増加により向上することを明らかにした。密着強度については時効および高温高湿環境下において劣化するが、銅板にカップリング処理を施すことで、85℃程度までは密着強度の改善が図られることがわかった。樹脂材のガラス転移温度を越えた120℃での時効では、500h程度の保持によりカップリングの効果が失効することも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビスフェノールF 型ジグリシジルエーテルを母材とする標準樹脂材を準備し、充填剤として、平均粒径1.98μmの二酸化珪素の球状フィラーを添加した。フィラーを添加する際にはカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加した。初年度(平成24年度)は、フィラー添加量を変化させた試料を作製して、樹脂材の機械的特性(弾性率、引張強度、破断伸び)を調査し、機械的特性に及ぼすフィラー添加量の影響を明らかにした。また、粘弾性測定よりマスターカーブを算出することに成功し、貯蔵弾性率、損失弾性率及び緩和挙動に及ぼすフィラー添加量の影響を明らかにした。 2年目(平成25年度)は、フィラーと樹脂とのカップリング効果に注目し、樹脂材の機械的特性および銅との界面強度に及ぼすカップリング処理の影響を調査した。当初計画していたガラスチップを用いた応力測定ができなかったため、銅板上に樹脂材の円柱状小突起を作製する手法を開発し、せん断試験により界面強度を測定する見通しを立てた。 3年目である平成26年度は、樹脂材の疲労特性調査及び樹脂/銅界面の密着強度に及ぼすカップリング処理の影響を調査した。室温での疲労特性に及ぼすフィラーのカップリング処理の影響を明らかにすることができた。樹脂材自身の熱機械的特性調査としては、ガラス転移温度を越えた疲労特性調査を残すのみとなり、ほぼ計画通りの達成度である。樹脂/銅界面の密着強度については、120℃での時効環境下および85℃85%R.H.での高温高湿環境下での劣化挙動に及ぼすカップリング処理の影響を明らかにできた。特に、樹脂材のガラス転移温度を越えた120℃での時効でカップリング効果が失効するという新たな知見を得ることもできた。また、カップリング処理後の金属表面において、化学分析よりSiが検出されることも見い出した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(平成24年度)は、本研究における標準樹脂材を作製し、その硬化物特性を調査し、機械的特性に及ぼすフィラー添加量の影響を明らかにした。2年目(平成25年度)は、フィラーのカップリング剤に注目し、樹脂材の機械的特性および銅との接合界面の界面強度に及ぼすカップリング剤の影響を調査した。また、ガラスチップを用いたチップ内の応力分布測定を試みたが、当初予定した測定には至らず、せん断試験法による界面強度測定法を開発した。3年目(平成26年度)は、樹脂材の室温での疲労特性、樹脂/銅界面の密着強度に及ぼすカップリング処理の影響、樹脂/銅界面の密着強度の高温及び高温高湿環境下における劣化挙動を調査した。これまでの成果より、樹脂材のガラス転移温度以上では、カップリング効果が失効する傾向が認められた。 最終年度である本年度は、本研究の最終目的である高機能相界面の創製につなげる基礎的な知見を得ることを目的として、樹脂/銅界面のマクロ特性の調査を引き続き実施する。また、樹脂材のガラス転移温度以上での疲労特性を調査することにより、カップリング効果が保持される温度範囲を明らかにする。さらに、引き続き高温高湿環境下および高温環境下における樹脂/銅異相界面の劣化挙動を調査する。樹脂/銅界面の微視的構造調査も継続して実施し、界面強度に及ぼす樹脂材の物性値、微視的構造、樹脂材の官能基の働き、カップリング剤の効果が有効となる温度域を明らかにして、界面強度出現機構を調査する。
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