研究課題/領域番号 |
24560402
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
根尾 陽一郎 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (50312674)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 表面プラズモン共鳴 |
研究概要 |
極短パルス電子ビームトレインを形成する為に必要となる量子効率0.1程度の光励起カソードの原理検証実験を行った.ピコ秒程度の応答速度を実現する為に,キャリア寿命がピコ秒以下の材料が必須となる.一般的に半導体を用いた場合には高い量子効率が実現可能であるが,極短パルス形成が困難であった.そこでキャリア寿命がフェムト秒の金属を用いる事が必要となる.しかし従来の金属光励起カソードは量子効率E-5~E-4と著しく低い事が問題となっている.本研究では金属光励起カソードに表面プラズモン共鳴を取り入れる事で量子効率の向上を目的として,平成24年には原理検証実験を行った.その結果,金属の仕事関数以上のエネルギーを持つ波長として266nmを選択し,金属材料としてアルミを用いた.表面プラズモン共鳴配置としてプリズム上にアルミ膜厚20nmを堆積しクレッチマン配置を形成した.この結果,ほぼ100%の光吸収は確認されたが,それに起因する光励起電流の量子効率は10-4程度であった.これはプラズモン励起のkベクトルと放射方向が直交している為,真空へ電子放射が行われる為には急速なエネルギー損失を伴う電子―電子散乱によって運動方向の回転が必須である事に起因する事を平行平板によるエネルギー分析によって明らかとした.クレッチマン配置での量子効率の向上を図るため,仕事関数低下の効果を,低仕事関数材料の被覆,ショットキー効果を用いて検証した.この結果,大凡2倍程度の増加は実現出来た.しかし要求される量子効率とは大きな隔たりがある.これは電子―電子散乱が致命的なプロセスである事を実証した結果であり,今後この散乱過程を経ない放射を実現する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた平成24年度に予定された研究は全て行いリーズナブルな結果を得た.しかし,電子―電子散乱が致命的なエネルギー損失を伴う事が新たに分った.クレッチマン配置ではプラズモン励起のkベクトルと放射方向が直交している為,不可避なプロセスである.平成24年度中に,放射機構を明らかとした事で,表面プラズモン共鳴を用いた新しい配置を提案した.これは電子放出面をアルミ薄膜の断面とする事で,プラズモン励起方向と放射方向を一致する事が出来る.この配置の原理検証を行った結果,最高量子効率0.1を実現した.またこの時に観察された現象で,膜厚20nmのアルミニウム薄膜を比較的大電流密度が流れる為に薄膜にダメージが形成される.このダメージがユニークなフラクタルを形成する事が新たに分かった. 以上の様に当初予定した実験を全て遂行し,その結果より新たな可能性を示す事に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
励起方向と放射方向を一致したクレッチマン配置ではアルミニウム薄膜の膜厚は20nmであり,前述した薄膜へのダメージは避ける事が出来ないと考えられる.そこで表面プラズモン共鳴がアルミニウム膜厚に依存しないオット配置の断面を用いる事を提案し,その準備を進めている.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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