本研究はマイクロ波によるワイヤレス給電技術を用い、バッテリーレス・電池レスセンサーの実現を目指した研究である。これまで特にバッテリーレス・電池レスセンサーに適したマイクロ波を受電・整流するレクテナ(Rectifying Circuit)の開発と、間欠(パルス)送電による、センサー情報とワイヤレス給電の干渉低減の研究を中心に行ってきた。レクテナはダイオードを用いた整流回路とアンテナで構成され、マイクロ波(RF)を直流(DC)に変換する素子である。スケジューリングされた間欠(パルス)送電による複数台の電池レスセンサーの駆動には前年度までに成功している。 さらに前年度はワイヤレスセンサーの動作状態の変化によっても効率が変動しない反射波利用型RF-DC整流回路の開発に成功した。本年度はさらに広範囲・高効率で動作するRF-DC整流回路の実現を目指した。整流回路の効率の変動は、センサーのような接続負荷の種類・その変動によってダイオードにかかる電圧が変化するために発生する。反射波利用型はその負荷の変化によって発生する反射波を回収・利用して広い負荷範囲での高効率を実現する設計思想であったが、性能に限界があった。そこで今年度は発想を転換し、接続負荷が変化した場合でもダイオードにかかる電圧を一定・最適化するために、整流回路と負荷との間にDC-DCコンバータを挿入するRF-DC-DC整流回路を提案・開発した。DC-DCコンバータは通常制御用電源を必要とするが、本研究では整流されたマイクロ波の一部を制御に用い、外部電源不要のRF-DC-DC整流回路を実現できた。実験により、外部電源不要で、負荷範囲200Ωから10kΩにおいて66%以上 を得られるRF-DC-DC整流回路を実現できた。
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