研究課題/領域番号 |
24560404
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安藤 英由樹 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70447035)
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キーワード | スリット視 / パブリックディスプレイ / 立体視ディスプレイ |
研究概要 |
通常の3D画像提示装置では左右の目に異なる視覚情報を提示する必要ためにデバイスの装着を必要とする.一方で,3D画像提示の1つの役割として,町中の広告や案内などがあり,特別な装置無しで裸眼で3D画像を見ることには注意を惹くという観点から効果的である.そこで本研究ではスリット視と呼ばれる一次元光源群から2次元イメージを知覚する人間の視覚特性に,裸眼で視差をつけて光源線を再現する方式を組み合わせ,多数人が同時に観察可能な3D情報提示デバイスの開発を目的とする.本提案手法では複数本の一次元光点列同期させて点滅させ,光線方向に指向性を持たせた筒を高速回転することで,従来手法に比べて低コストで3次元動画像を提示することが出来る.上記の研究目的の実現のために今年度は,前年度で求めた見やすいスクロール速度や視差の条件パラメタを利用して①奥行方向の移動も伴うオブジェクトであっても効果的な3D表現が可能であるかを明らかとした.また,②前年度にHMDを用いたシミュレーションで求めた物理的な幾何パラメータを用いて,実際に提案手法を実現する実機を試作して,その効果を確認した.これらについて,国内と国際会議で発表し,新たに分かった効果について発信を行った.また次年度の展示形式の国際会議(SIGGRAPH2014)に投稿し,採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画では,①24年度で設計したFPGAなどを用いたLEDの点滅を同期のための駆動回路部,PCなどから動画をロードするための通信回路部などのハードウェア(回路)を構築する,また,ハードウェアをコントロールするソフトウェアの実装を実現する.②この回転機構においても,シミュレーションで得られたパラメータが物理的制約をクリアできるか確認する必要があり,また設計パラメータを実現する最適な設計を行うためのハードウェア(機構)要素の試作を行う.の2点について挙げていた.①については,実際にLEDの点滅を同期のための駆動回路をマイコン(dsPIC)により実現し,PCから動画をUSB接続で各視点ごとの画像データをロードするためのデバイスを実装し,8台において正常に動作することを確認した.②については①を実現するために前年度で確認できていなかったスリットの間隔や配置によって,どの場所においてどのように見えるかとという問題を明らかとするシミュレーションを作成し,これを用いて具体的に①を実現するデバイスの設計論が成立した.したがって,当初の計画を満たす進捗状況となった.さらに,前年度では確認できていなかった奥行方向への移動について,新たにシミュレーションを作成し実験した結果として,奥行方向への運動について知覚できたならば,奥行方向へのスリット視も立体視を破綻させることなく知覚できることが新たに確認された.さらに,視認性の高い条件のパラメタを用いて,国際会議(SIGGRAPH ASIA)にて展示を行ない,方式に関して多くに来場者に理解を頂いた.
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今後の研究の推進方策 |
26年度は下記の3点を中心に進める. ①26年度は25年度に試作したデバイスを改良してより安定した3D表示を可能にする.特に現在の本数8本では視認性がよくないため16-20本を同期して制御することでこの解決を試みる.また,最適配置のパターンについて,シミュレーションと実機の比較を行う実験を行い,設計論について検証を行う. ②このデバイスを効果的に見せるためのコンテンツ設計論の構築と具体的なコンテンツを制作する.また,コンテンツの主観的評価に関して評価実験を行うことで,ヒトの知覚特性とコンテンツ設計論の関係性を明らかにする. ③学術的な成果としては,上記の結果をまとめて論文投稿する.また,8月に開催されるACM SIGGRAPH2014のe-techセッションでの展示に向けて,より長期間安定に動作するデバイスへの改良と効果を容易に理解できるコンテンツの作成に取り組む.特に,展示などに際しては現在画像(コンテンツ1つ)の更新にかかる時間に数十分を要するため,これを数秒で行える改善について試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定であった画像転送用のPCの納期が変更となり,年度内購入ができなくなったため. 上記理由により購入できなかった,画像転送用に必要となるPC及び構成部品の購入.
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