研究課題/領域番号 |
24560409
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
田中 高行 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (60207107)
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研究分担者 |
豊田 一彦 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80612663)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発振器 / マイクロ波 / 高調波 / 移相器 / ビームステアリング / レーダー |
研究概要 |
ITS(高度交通システム)等に必要とされるレーダーでは、電波の放射方向を連続的に高速で変化させるビームステアリング技術が不可欠である。本研究はこの技術をPush-Push 発振器アレーによって行う。Push-Push発振器は2次高調波を出力とするので、低価格で高性能の低周波数用デバイスを用いることができる。また、これを発振器アレーに用いた場合、結合回路で得られた移相量に対し出力信号の移相量は2倍となり、広範囲のビームステアリングを低コストで行うことができる。本研究では、従来の発振器アレーに対し、より簡易な構成で高性能・低コストで実現できるPush-Push 発振器アレーの総合的な研究を目的としている。 本年度の結果を使用する発振器の構成ごとに示す。 1. 反射型Push-Push 発振器の負性抵抗回路の端子に移相量可変結合回路を接続した構成:非対称の構成とした移相量可変結合回路の両端子での反射位相に差をつけ、各発振器の負性抵抗回路の端子の信号の位相差を制御し、それにより出力位相差の制御を電気的に行うものである。大幅な出力信号の移相量の可変化を確認した。 2. 反射型Push-Push 発振器の共振器間を結合回路を用いて接続した構成:一つの発振器の共振器から取り出した信号をバッファアンプで方向性を持たせ、移相回路により移相を行い、 隣接する発振器に注入し、出力位相差の制御を行うものである。大幅な出力信号の移相量の可変化を確認した。 3. 帰還型Push-Push 発振器の帰還ループ間に結合回路を用いた構成:一つの発振器の帰還ループの信号を方向性結合器で取り出し、移相回路により信号の移相を行い、隣接する発振器注入することで、出力位相差の制御を行うものである。大幅な出力信号の移相量の可変化を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの達成度を使用する発振器の構成ごとに示す。 1. 反射型Push-Push 発振器の負性抵抗回路の端子に移相量可変結合回路を接続した構成:大幅な出力信号の移相量の可変化を確認し、十分な出力電力も得られるなど、良好な結果が得られた。学術論文に投稿したが、考察不足が理由で不採録であった。 2. 反射型Push-Push 発振器の共振器間を結合回路を用いて接続した構成:大幅な出力信号の移相量の可変化を確認し、十分な出力電力も得られるなど、良好な結果が得られた。学術論文に投稿し採録された。また、より簡易な構成の結合回路を考案し、動作確認を行った。 3. 帰還型Push-Push 発振器の帰還ループ間に結合回路を用いた構成: 大幅な出力信号の移相量の可変化を確認し、十分な出力電力も得られるなど、良好な結果が得られた。国際学会(Asia Pacific Microwave Symposium 2012年12月)で発表した。 1.については目標を達成できず、2.については目標を達成し、より簡易な構成の結合回路の検討も行った。3.については、目標より早く達成した。従って、やや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策を使用する発振器の構成ごとに示す。 1. 反射型Push-Push 発振器の負性抵抗回路の端子に移相量可変結合回路を接続した構成:論文が不採録になった理由として、結合回路の動作を査読者が十分理解できなかったことがあるので、説明をわかりやすく十分に行い、再度学術論文に投稿する。 2. 反射型Push-Push 発振器の共振器間を結合回路を用いて接続した構成:より簡易な構成の結合回路を考案し、動作確認を行ったので、これを用いてPush-Push発振器アレーを構成し、動作確認を行ったのち、学術論文に投稿する。 3. 帰還型Push-Push 発振器の帰還ループ間に結合回路を用いた構成:国際学会(Asia Pacific Microwave Symposium 2012年12月)で発表したので、理論的な考察を十分に行い、学術論文に投稿する。 4. 1~3で得られた発振器アレーの出力端子にアンテナを接続した構成:これまで検討を行ったPush-Push 発振器(反射型/帰還型)アレーにアンテナを接続した場合について研究を進める。アレーアンテナでは、所望の放射パターンを実現するためのアンテナの間隔が明らかになっている。しかし、発振器アレーでは各発振器の出力端の間隔が必ずしも最適なアンテナ間隔と一致しない。そこで、発振器のレイアウトで決まる出力端の間隔と最適なアンテナ素子の間隔が合う構成を検討する。一応の結果が出たところで,国内の学会(電子情報通信学会総合大会、または同研究会)で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では、物品費の項目で回路シミュレータを購入する予定であった。しかし、同じ学科内で使用しているシミュレータで所望の研究を行えるようになったので不要となった。また、使用する部品の購入額が予定より大きくなり、測定データの処理や学術論文に成果をまとめるためのパーソナルコンピュータのソフトウェアを購入する必要が生じたので,現在の額になった。 当初の平成25年度の使用計画としては、物品費520,000円、旅費480,000円、その他100,000円、計1,100,000円であった。そこで、次年度使用額(B-A)は、新しい部品購入のために物品費の項目、学会発表及び資料収集のために旅費の項目、研究成果の発表としてその他の項目に当てるものとする。
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