研究課題/領域番号 |
24560409
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
田中 高行 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (60207107)
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研究分担者 |
豊田 一彦 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80612663)
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キーワード | 発振器 / マイクロ波 / 高調波 / 移相器 / ビームステアリング / レーダー |
研究概要 |
ITS(高度交通システム)等に必要とされるレーダーでは、電波の放射方向を連続的に高速で変化させるビームステアリング技術が不可欠である。本研究はこの技術をPush-Push 発振器アレーによって行う。Push-Push発振器は2次高調波を出力とするので、低価格で高性能の低周波数用デバイスを用いることができる。また、これを発振器アレーに用いた場合、結合回路で得られた移相量に対し出力信号の移相量は2倍となり、広範囲のビームステアリングを低コストで行うことができる。 本年度の結果を使用する発振器の構成ごとに示す。 1.反射型Push-Push 発振器の負性抵抗回路の端子に移相量可変結合回路を接続した構成:非対称の構成とした移相量可変結合回路の両端子での反射位相に差をつけ、各発振器の負性抵抗回路の端子の信号の位相差を制御し、それにより出力位相差の制御を電気的に行うものである。大幅な出力信号の移相量の可変化を確認した。平成24年度に学術論文に投稿したが、考察不足が理由で不採録であったので、さらに考察を加え再投稿した。 2.反射型Push-Push発振器の共振器間を結合回路を用いて接続した構成:共振器間にFET (HEMT) のみで構成された結合回路を接続した構成の回路について検討を行った。たいへん簡易な構成で、発振器アレーに必要な特性を実現できた。 3.帰還型Push-Push発振器の帰還ループ間に結合回路を用いた構成:平成一つの発振器の帰還ループの信号を方向性結合器で取り出し、移相回路により信号の移相を行い、隣接する発振器注入することで、出力位相差の制御を行うものである。大幅な出力信号の移相量の可変化を確認した。平成24年度に、国際学会で発表した。その結果に考察を加え、学術論文に投稿する準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの達成度を使用する発振器の構成ごとに示す。 1.反射型Push-Push発振器の負性抵抗回路の端子に移相量可変結合回路を接続した構成:大幅な出力信号の移相量の可変化を確認し、十分な出力電力も得られるなど、良好な結果が得られた。平成24年度に学術論文投稿したが、考察不足が理由で不採録であったので、さらに考察を加え再投稿した。しかし、より高度な理論を用いた説明を要求され,不採録であった。 2.反射型Push-Push発振器の共振器間を、結合回路を用いて接続した構成:FET (HEMT) のみで構成された結合回路を接続した構成の回路について検討を行い、たいへん簡易な構成で、発振器アレーを実現できた。十分な出力電力も得られるなど、良好な結果が得られ、電子情報通信学会研究会、総合大会で発表した。学術論文への投稿はまだ行っていない。 3.帰還型Push-Push発振器の帰還ループ間に結合回路を用いた構成: 大幅な出力信号の移相量の可変化を確認し、十分な出力電力も得られるなど、良好な結果が得られた。平成24年度に国際学会(Asia Pacific Microwave Symposium)で発表した。その結果を学術論文にまとめる予定であったが、考察すべき問題が解決できなかったので、未投稿である。 1.については論文作成(採録されること)が達成できず、2.については、より簡易な構成の結合回路を実現性したが、学術論文への投稿がまだである。3.については、論文作成が未達成である。主に論文作成が遅れている。また、出力端子にアンテナを付けた構成を検討する予定であったが、発振器アレーに適した構成(1.2.3.の構成のどれが一番適当か)について、十分な検討が行われていない。従って、やや遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策を使用する発振器の構成ごとに示す。 1.反射型Push-Push発振器の負性抵抗回路の端子に移相量可変結合回路を接続した構成:論文が再度不採録になった理由として、理論的な裏付けが不十分だったので、より理論的な検討を行い、再度学術論文に投稿する。 2.反射型Push-Push発振器の共振器間を結合回路を用いて接続した構成:より簡易な構成の結合回路を考案し、動作確認を行ったので、これを用いたPush-Push発振器アレーについて十分な検討を行い、学術論文に投稿する。 3.帰還型Push-Push 発振器の帰還ループ間に結合回路を用いた構成:国際学会(Asia Pacific Microwave Symposium 2012年12月)で発表したので、理論的な考察を十分に行い、学術論文に投稿する。 4.1~3で得られた発振器アレーの出力端子にアンテナを接続した構成:これまで検討を行ったPush-Push 発振器(反射型/帰還型)アレーにアンテナを接続した場合について研究を進める。アレー状にアンテナを配置したアレーアンテナでは、所望の放射パターンを実現するためのアンテナの間隔が明らかになっている。しかし、発振器アレーでは各発振器の出力端の間隔が必ずしも最適なアンテナ間隔と一致しない。そこで、発振器のレイアウトで決まる出力端の間隔と最適なアンテナ素子の間隔が合う構成を検討する。一応の結果が出たところで,国内の学会(電子情報通信学会総合大会、または同研究会)で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では、その他の項目で論文掲載料を支払う予定であった。しかし、投稿はしたものの不採録であったので不要となった。また、発表する国際学会の場所を変更したため、差額が生じることになった。 当初の平成26年度の使用計画としては、物品費420,000円、旅費480,000円、その他200,000円、計1,100,000円であった。しかし、使用する部品が生産中止になり、他の部品を新たに調達する必要が生じたので,物品費に平成25年度の繰り越し分を加えるものとする。
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