研究課題/領域番号 |
24560416
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
藤本 邦昭 東海大学, 基盤工学部, 教授 (60229044)
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キーワード | AD変換器 / ニューロンCMOS / FGMOS / ニューロンCMOSインバータ |
研究概要 |
可変閾値特性を有する電子素子であるニューロンCMOSインバータを電圧レベルの判定素子に用いることで、高速、低消費電力、低レイアウト面積といった特性が同時に得られるAD変換器を構成し、その性能を試作チップを用いた実験により確認することを本研究の目標としている。 AD変換器は、正確な電圧レベルの判定が必要である。しかし、ニューロンCMOSインバータを電圧レベルの判定に用いようとすると、フローティングゲートと基板間の寄生容量の影響で判定レベルがずれてしまう。そこで、これを防ぐために、フローティングゲートの半分をWellと重ね、電源-フローティングゲート間容量とグランド‐フローティングゲート間容量を等しくして寄生容量の影響を打ち消す方式、MOSFETのチャネル長とチャネル幅を調整して寄生容量の影響を打ち消す方式、のどちらを採用するか検討してきた。しかし、いずれの方式も寄生容量の影響を小さくできるものの、完全にキャンセルすることはできなかった。また、フローティングゲートの初期電荷により判定レベルが影響を受けるという新たな問題が発生した。そこで、フローティングゲートの電荷を一定時間ごとにリセットする方式により直列形、並列形、直並列形の3種類のAD変換器を試作した。 また、ニューロンCMOSインバータを用いたAD変換器は、基準電圧生成回路を必要としないという特徴を有しているが、あえて基準電圧生成回路と共に用いることで、レイアウト面積を大幅に削減できる新しい方式のAD変換回路についても試作した。 さらに、ニューロンCMOSインバータは、特別な集積回路製造プロセスを必要とするため製造コストが高くなるので、一般的な集積回路製造プロセスで製造できるように、ニューロンCMOSインバータをこれと等価な回路で置き換えたAD変換器についても試作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フローティングゲートの初期電荷により電圧判定レベルが影響を受け、AD変換の精度が悪くなるという新たな問題が発生したため研究が停滞したが、フローティングゲートの電荷を一定時間ごとにリセットすることでこの問題が解決できることがわかり、その後は順調に研究を進めることができた。 しかし、、5種類のAD変換器を試作したため予算が不足し、当初予定していたフローティングゲートの面積、ゲート長、ゲート幅を変更した場合の特性を試作チップを用いて評価することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ニューロンCMOSインバータを用いた並列形、直列形、直並列形の3種類のAD変換器、基準電圧生成回路とニューロンCMOSインバータを用いたAD変換器およびニューロンCMOSインバータを一般のCMOSプロセスで製造可能な部品で置き換えたAD変換器の計5種類のAD変換器のレイアウト設計が終了しており、現在は試作チップの完成待ちである。今後は、試作チップを用いた実験により、それぞれの回路の性能を評価したいと考えている。 また、今年度は2度のチップ試作を行いたいと考えており、1回目の試作ではフローティングゲートの面積、ゲート長、ゲート幅と電圧レベルの判定精度、消費電力、動作速度の関係を明らかにし、2回目のチップ試作ではこれを考慮して完成度の高いAD変換器を試作したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度への繰越が生じたのは、健康上の理由で当初予定していた国際会議での研究成果の発表を取りやめたためである。 今年度は、2回の集積回路の試作を行いたいと考えており、チップ試作費用として80万円を予定している。また、得られた成果は国際会議において発表したいと考えており、そのための費用として20万円を予定している。
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