可変敷値特性を有する電子素子であるニューロンCMOSインバータを電圧レベルの判定素子に用いることで、高速、低消費電力、低レイアウト面積といった特徴が同時に得られるAD変換器を構成し、その特性を試作チップを用いた実験により確認することを本研究の目的としている。 平成24年度は、寄生容量の影響を受けにくいニューロンCMOSインバータの回路構成について提案し、動作速度とレイアウト面積の両面において優れていることをシミュレーションにより確認した。 25年度は、このニューロンCMOSインバータを実チップを用いた実験により評価したところ、電圧判定レベルが初期電荷の影響を受けるという新たな問題が発生した。そこで、フローティングゲートの初期電荷を一定時間ごとにリセットする方式を採用し、これを基本部品として直列型、並列型、直並列型の3種類のAD変換器の試作を行った。 平成26年度は、試作チップを用いた実験によりAD変換器の性能を評価する予定であったが、試作チップは全て動作せず、性能評価を行うことができなかった。チップレベルのシミュレーションでは良好な動作が得られており、現時点で原因は不明である。再度、レイアウトを見直して試作を行う予定である。また、ニューロンCMOSインバータに2個のMOSFETを追加し、これにクロックを印加したクロックドニューロンCMOSインバータを提案し、これを電圧レベルの判別素子として使用すると消費電力が削減できることをシミュレーションにより確認した。さらに、研究を進める過程で、ニューロンCMOSインバータが連想メモリを構成する基本として適している事が判明し、ニューロンCMOSインバータを用いた連想メモリの研究をスタートさせた。
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