研究課題/領域番号 |
24560423
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
穴田 哲夫 神奈川大学, 工学部, 教授 (20260987)
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研究分担者 |
陳 春平 神奈川大学, 工学部, 助教 (20440266)
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キーワード | サブミリ波 / フォトニック結晶 / 電磁波回路 / バンドパスフィルタ / ミリ波 / 金属フォトニック結晶 / 時間領域 / T字型電力分配器 |
研究概要 |
最近の通信情報量の飛躍的増大に伴って,有線と無線のシームレスな数十Gbpsの短距離超高速無線通信システムの実現に向けて,広帯域周波数資源を有効に利用できるミリ波の高周波数域からテラヘルツ波帯での低損失且つ高集積化可能な超小型電磁波回路の開発が望まれており,マイクロ波帯で必要な各種機能受動回路はミリ波,テラヘルツ帯でも必要になることは明らかである.しかしこの領域で働く集積化の可能な電磁波回路の研究はほとんどなされていない.本研究の目的は,ミリ波・サブミリ波帯の電磁波デバイスの解析,さらに電磁波回路としての設計手法の確立と実装・応用の両面から研究することであり,具体的には,ミリ波・テラヘルツ波フォトニック結晶による電磁波回路の開発(電力分配器,フィルタ,スイッチ等)である.そのために,筆者らは,先ずフォトニック結晶のバンド構造を平面波展開法や有限時間差分法に基づいて固有値問題を数値解析する手法および誘電体・金属フォトニック結晶線欠陥導波路の波動伝搬特性と点欠陥共振器の共振周波数,共振モードを計算できるようにプログラムを整備した.その有効性を確かめると共に実際的な電磁波デバイスへの応用として,点欠陥共振器に円柱誘電体と微小摂動を装荷した共振器の2重縮退モードを用いたバンドパスフィルタを提案し,その周波数特性や動作時の電磁界分布を計算し,新しいフォトニック結晶を用いたテラヘルツ帯でのバンドパスフィルタを実現した.成果は電子情報通信学会誌,国際会議等で発表した.なお,筆者らが提案する2重縮退共振モードを用いた超小型フォトニック結晶バンドパスフィルタ構造は,筆者の知る限り世界で初めての報告である.提案したバンドパスフィルタは次世代の超高速通信において必須のデバイスであり,今後,真のユビキタス社会の実現のためにフォトニック結晶電磁波回路へnの応用は加速して行くものと確信している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
短ミリ波・テラヘルツ波領域の研究は主に材料系,センシング系であり,次世代通信における電磁波デバイスの研究はようやく始まったところであり,フォトニック結晶を用いた通信分野における超小型バンドパスフィルタが実現できたことにより,世界に一歩抜け出したと自負している.この成果の一部はMicrowave and Optical Technology Letters Volume 56, Issue 4, pages 792–797, April 2014 ,WuMW2014国際会議,電子情報通信学会誌(IEICE,Vol.J97-C,No.5, May. 2014記載予定)に公表した.点欠陥シリコン・フォトニック結晶共振器に微小な誘電体摂動を装荷した技術は,フィルタのみならず,T型電力分配デバイスの電磁波伝搬の制御・方向変換などのスイッチ機能にも有用であることを見出した.現在,その動作原理の理論的解明に取り組んでいる.具体的には,電磁波回路はスケーリング則が成り立つので,本科研費で購入した測定回路装置を用いて,ミリ波帯でフォトニック結晶によるバンドパスフィルタを実際に作製し,実験による動作確認を行っているところである.さらに金属フォトニック結晶による電磁波の強い閉じ込め機能と超広帯域バンドギャップに着目し,金属と誘電体の混在したフォトニック結晶の点欠陥共振器を応用し,2重縮退共振モードを用いた狭帯域バンドパスフィルタと微小誘電体摂動によるT字型電力分配回路をスイッチとして応用する新しい研究を始めている.
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今後の研究の推進方策 |
これまで主に誘電体フォトニック結晶デバイスの研究が先行しているが,誘電体フォトニック結晶構造は,外部への放射を抑えるためにより多くの周期構造を構成する必要がある.短ミリ波・テラヘルツ波領域では光波領域に比して金属の電気伝導度が十分に高いため,小型化と金属損失との兼ね合いにより,電磁波を閉じ込める材料としてマイクロ波周波数と同様に金属を電磁波回路に利用することが可能である.THz帯において低損失・低分散特性を備えている平行平板金属導波路が利用されているが,電磁波の制御と操作性に難点がある.従って,従来の回路構造と金属フォトニック結晶を組み合わせることにより,新しい電磁波回路の幅広い応用が考えられる.また金属フォトニック結晶で構成された電磁波回路は,少ない周期構造で電磁波を強く閉じ込めることができる上,これまで研究されてきた導波管回路との整合性も良い.したがって,より実際的な超高周波における電磁波回路を実現することが可能である.今後,金属フォトニック結晶による電磁波の強い閉じ込め機能と超広帯域バンドギャップに着目し,金属と誘電体の混在したフォトニック結晶の点欠陥共振器を応用し,2重縮退共振モードを用いた狭帯域バンドパスフィルタと微小誘電体摂動によるT字型電力分配回路とスイッチング回路を提案する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画していたコンピュータのGPUの購入ができなかった為. 電子情報通信学会の論文投稿費,PIERS2014にてテラヘルツ帯における研究成果を発表.EuMW2014において論文発表のための参加費,電磁波回路の作製費に使用予定
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