研究課題/領域番号 |
24560425
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
金井 靖 新潟工科大学, 工学部, 教授 (00251786)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 垂直磁気記録 / 記録ヘッド / マイクロマグネティック解析 / 並列計算 |
研究概要 |
1.うず電流の計算と計算システムの高速化:現有の差分法ベースのソフトウェアではなく,有限要素法(Magparなど)ベースの方法で検討することとした.この理由は差分法では磁性体の境界でうず電流の法線方向成分を連続とするため,プログラムが複雑になることに加え,処理時間は3倍になること,さらにはデータ作成が非常に煩雑になるためである.計算システムの高速化は新たに導入されたハードウェアにより実現された. 2.動的なヘッド磁界計算と残留媒体計算の組み合わせ:記録ヘッドの動磁界解析およびマイクロマグネティック媒体記録シミュレーションを組み合わせた評価を行い,論文報告を行った.具体的には,(1)ライトヘッドの記録磁界を,時系列を追って3次元空間で,マイクロマグネティック解析により求め,(2)その結果をマイクロマグネティック媒体記録シミュレーションに引き渡し,(3)媒体残留磁化パターンを評価したところ,媒体の逆磁区核形成磁界を適当に選択することにより,記録ヘッドのシールド部から発生する不要磁界によるノイズは大幅に低減できることが分かった. 3.次世代垂直磁気記録方式(シングル記録方式,熱磁気記録方式,高周波アシスト記録方式,およびビットパターン媒体を用いた方式)に対応した磁気記録ライトヘッドの提案:次世代垂直磁気記録システムに用いられるライトヘッド構造および材料の提案を行い,共著者として多くの論文報告を行った.一例を挙げると高周波アシスト磁気記録において,スピントルクオシレータと磁気ヘッドは単独で解析するのではなく,一体として解析する必要があることを報告した.また,平面型記録ヘッドおよび従来構造記録ヘッドモデリングにより高速応答を決定する本質的な因子を見出した.すなわち,コイルの構造と主磁極とコイルの相対位置,シールドの構造,主磁極先端の構造,および主磁極とシールドの距離,などである.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より開発してきたソフトウェアは差分法をベースにしているため,うず電流への対応が極めて難しいことが判明した.そこで,有限要素法(Magparなど)ベースの方法で検討することとしたので,うず電流プログラムの開発が遅れている.一方,平面型記録ヘッドおよび従来構造記録ヘッドモデリングにより高速応答を決定する本質的な因子を見出した.また,高周波アシスト記録用ヘッドに関し,Maxwell方程式を解く有限要素法を利用して,記録磁界強度を保つとともにスピントルクオシレータに加わる磁界強度が強く一様にできるような磁気ヘッド構造を見出した.さらに,高周波アシスト記録用ヘッドに関しては,スピントルクオシレータと磁気ヘッドを一体に解析する必要があることを明らかにした.以上により,ある部分は進んでいるが,ある部分では遅れがある.これより,おおむね順調に進んでいる,と判断している.
|
今後の研究の推進方策 |
1.うず電流を考慮した記録ヘッドの計算と計算システムの高速化 2台めの計算機システムを導入する.アルゴリズムの改良を図ることにより,計算効率は大幅に上がり,種々の提案が可能になると予想する. 2.動的なヘッド磁界計算と残留媒体計算とを組み合わせる 平成24年度までにライトヘッド磁界解析シミュレーションと媒体磁化記録シミュレーションがオフラインでつなげ,結果を論文にまとめ報告したが,これを一体化して計算することが望ましい.現状では,それぞれのマイクロマグネティック計算が膨大な計算時間と計算機メモリを必要としており,一体化した際には莫大な計算時間および計算機メモリを要するが,その対処方法を検討する予定である. 3.4種類の次世代垂直磁気記録方式に対応した磁気記録ライトヘッドの提案 平成25年中に,シングル記録方式(Shingled magnetic recording: SMR)が導入されるとのアナウンスが各社からあった.SMRはもともと2次元磁気記録方式(two-dimensional magnetic recording: TDMR)の記録部分であるから,SMR用ライトヘッドは,大きな変更を伴わずにTDMR用ライトヘッドに発展すると考える.熱アシスト磁気記録方式(Thermally-assisted magnetic recording: TAMR)は平成25年度までに導入されるとの予測は少なく,MAMRおよびビットパターン媒体(bit-patterned media: BPM)は平成25年度までに導入されることはないと予測されている.しかしながら,一般にTAMRと組み合わせてBPMは垂直磁気記録の究極の形態であると考えられ,さらにTDMRとの組み合わせが考えられる.平成25年度は研究動向に注意しながらライトヘッドを提案する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.平成24年度に購入した計算機システムは,納入業者のご厚意により,納入価格が相当に下がった.この差額分により,平成25年度は初年度よりも上級仕様の計算機システムを導入する. 2.うず電流プログラムを当初予定の差分法から有限要素法に変更予定であり,ソフトウェア開発環境を整備する必要がある.そのため,コンパイラなどを揃える予定である. 3.投稿していた論文が採録され,カラー印刷を依頼している.この費用(投稿料金)を本予算から支弁する予定である. 4.結果の公表に関し,より積極的に国内外で学会発表を行う予定である.
|