(1)直流駆動の青色発光無機薄膜ELデバイスの開発 本研究課題で開発したコンビナトリアル・ディップコート法を用いてEuまたはBi付活多元系酸化物蛍光体薄膜を作製した結果、近紫外領域で強い発光を呈する次の2つの材料を見出すことができた。Eu2+付活(SrO)-(Al2O3)系材料において、母体構成元素の化学的組成の制御により、波長約380[nm]をピークとする強い近紫外PLが得られることを明らかにした。さらに、Y3Ga5O12:Bi蛍光体において、Bi含有量の最適化により波長約314[nm]の非常に強い紫外PLを呈することを明らかにした。一方、市販のZnS系蛍光体を使用した交流駆動の青緑色フレキシブル分散型ELにおいて、デバイス構造および使用する各層の膜厚や作製条件を最適化した結果、従来のデバイスと比較して発光開始電圧を約20[V]低減させることに成功した。さらに、薄膜化と膜表面の平坦性を同時に満たした酸化物薄膜を実現するための新たな成膜技術の開発の一環として、超音波噴霧を利用した成膜装置を作製し、かつこの装置を使用して成膜条件を最適化した結果、表面平坦性と結晶性に優れた膜厚約80[nm]以下のZnO薄膜の形成に成功した。 (2)青色光励起対応の黄色発光酸化物蛍光体薄膜の開発 黄色発光YAG:Ce蛍光体において、結晶内の欠陥や非発光中心の低減による発光効率の向上を目指した。まず結晶内の欠陥や非発光中心を定量化するために光音響/PL同時測定システムを立ち上げ、蛍光体中のCe濃度の増加に伴う非発光過程の定量化とそれを低減するための作製条件について検討した。 (3)白色発光無機薄膜ELデバイスの試作とその照明用光源としての実用化の検証 目標とする白色無機薄膜ELはまだ実現されていないが、上記の黄色蛍光体と青色発光LEDを組み合わせることで白色照明が実現可能であることを確認している。
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