研究課題/領域番号 |
24560427
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
脇田 絋一 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (20301640)
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研究分担者 |
高橋 誠 中部大学, 工学部, 教授 (10236317)
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キーワード | 並列処理 / 高速 / 低電圧駆動 / 励起子吸収 / フランツ・ケルデッシュ効果 / 空間光変調 |
研究概要 |
本研究は光の超並列性・超高速性を活かした光の波面を空間的に自由に制御する新しい光情報処理システム実現を目指して高純度半導体バルクにおいて見出された室温励起子吸収の電界印加に伴う大幅な長波長シフト効果を利用して、層に垂直な光入射の構成で既存素子を速度・駆動電圧で大幅に凌駕する新しい光情報処理素子の実現を目指している。 当初計画に比べ予期せぬ装置(水素純化装置および結晶成長装置)の故障で、高純度エピタキシャル層の成長が不可能となり在庫エピ膜も枯渇して素子作製に支障を来たしたため、結晶性評価用の半絶縁性基板上に形成されたエピ層を流用し、これに直接ショットキー電極、アース電極を形成して基本性能を調べた。その後、本交付資金により急遽水素純化装置を購入して結晶成長を再開し高純度化を再度進めた。その結果、残留不純物は故障以前のレベル10^13cm-3台に戻り、空乏層厚はゼロVで数μm、10Vで数10μmとなり、十分な消光比の得られるレベルに達し、現在さらに高純度化を進めている。 素子構造をリング状電極を変更して電界印加部に直接光が入射する構造を採用して半透明性のショットキー電極とした。この電極の整流性は良好で、反射損は3dB以下であった。結果として量子閉じ込めシュタルク効果類似の励起子吸収の長波長シフトを伴った効果を確認し、低電圧化、高速化の見通しを得た。電界印加に伴う屈折率変化に関して検討を始めた。当初計画の誘電体薄膜との集積化による偏波制御についてはポスドク研究員1名が急遽母校の教員に着任・帰国したために当初計画より遅れ気味である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
結晶成長関連の装置の不具合により、当初計画に遅れを生じたが、現在、結晶の純度に関しては元のレベルに復帰し、低電圧および高速化に関しては達成できる見込みである。ただ、主業務担務者であるポスドク研究員の唐突な帰国による戦力ダウンは予期せぬ出来事で、素子形状の最適化にどこまで進めるか胸突き八丁の段階である。したがって究極の目標である低電圧駆動・高速集積化素子の作製、立証にまで到達できるか予断を許さない段階である。また、最終年度の目的に掲げた誘電体との集積化による偏波制御のテーマに関してもどこまで行けるかまだ見通しは立っておらず、かなり困難な状況にある。当面は単体性能の立証を最優先に進めていき、前記の課題は次の段階のテーマと考えている。ただ、同じ変調でも吸収による光強度の変調と屈折率制御によるものとでは、今後の展開の広がりは大きく異なるため、極力、単体の評価は早急に仕上げて次のステップに移りたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
単体素子の性能確認ができれば集積化は素子作製工程・技術は確立しているので、それほど困難な課題ではなく、集積化、アレイ化を進めていく。 また、吸収係数変化を利用した変調は、吸収光は最終的には熱になってしまうので、基本動作確認が終了すれば極力このメカニズムに基づく変調は中止し、本命と考えられる電界印加による屈折率制御に進んでいきたい。動作機構的にも先行目標である液晶等との類似性は吸収型と比べて多いので、技術の原理確認、そのポテンシャルの片鱗を示して既存デバイスに対する速度、低駆動電圧等の優位性を示すのに好都合である。その段階となって初めて既存技術の文字通りの凌駕といえる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究助成基金より謝金の出ていたポスドク研究員が急遽、出身母校の准教授に着任し、帰国(ネパール)してしまったため、次年度使用額が生じた。 平成26年度中に謝金或いは物品費等で上記助成基金の次年度使用額を使い、研究を遂行する予定である。
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