研究課題/領域番号 |
24560430
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
安元 清俊 福岡工業大学, 付置研究所, 研究員 (60037926)
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研究分担者 |
前田 洋 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (50264073)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 2次元平面導波路 / 電磁波バンドギャップ効果 / 2次元フォトニック結晶 / 金属ポスト / マイクロ波・ミリ波受動デバイス |
研究概要 |
【安元 担当】 円柱のT-マトリックスと Lattice Sums を使って多層のポスト配列に対する一般化散乱行列を計算し、円柱ポストで構成した2次元平面導波路に対して長波長近似が適用できることを示した。次に、長波長近似を使って、ポスト配列による基本フロケ波成分の反射と透過の問題を解析し、2次元平面導波路に等価な方形導波管の実効横幅を準解析的に計算する方法を示した。また、種々の2次元平面導波路のモード解析を行い、ポスト間のギャプを半波長以下に設計すれば横方向への電磁界の洩れは一般に小さいこと、ポスト配列の層数を3層にすれば、殆どの導波路において横方向への電磁波の洩れは無視できるほど小さくなることを確認した。更に、フォトニック結晶導波路に対する結合モード理論を使って、2平行平面導波路間の結合特性を評価する結合モード方程式を導出した。 【前田 担当】 CIP 技法を用いた波動伝搬解析コードによる数値解析およびマイクロ波実験システムを使った伝送特性の計測を実施した。直線状に配置した2列の円柱ポスト(材質は誘電体または導体)により導波路を構成した最も基本的な構成から、ポスト列を1層ずつ増していき、基本的な電磁波閉じ込めを数値解析およびマイクロ波モデル実験で確認した。数値解析結果と実験結果から求めたSパラメータ(S21)は互いによく一致した。またベクトルネットワークアナライザを用いて実験的に位相定数を求め、安元らによる理論解析結果とよく一致する値を得た。更に、ポスト配列を途中で角度120°折り曲げて、曲げ損失を測定した。折れ曲がり点からの電磁放射を数値解析により可視化して明らかにしたうえで、放射を抑制するための追加のポスト配置を検討し、実験および数値計算の実施により十分な抑制効果を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.Lattice SumとT-マトリックスを用いた解析(担当:安元): 2次元フォトニック結晶導波路と同様な手続で平面導波路の分散式を導くことができた。この分散式に長波長近似を適用して、平面導波路に等価な方形導波管の実効横幅を定義することが可能になった。 2.フーリエモード解析と一般化散乱行列を用いた数値解析(担当:安元): 金属ポストの配列に対して一般化散乱行列を導入したことにより、任意の層数の金属ポスト列からなる平面導波路の導波特性を系統的に解析できるようになった。その結果、ポストの周期長に対してポスト間のギャップが大きい場合でも、ポスト列を3層以上にすれば漏洩損失が無視できるほど小さくなることを明らかにした。 3.CIP 技法を用いた波動伝搬解析コードによる数値解析(担当:前田): CIP 技法を用いて2次元周期構造中の電磁波伝搬を解析する数値解析コードの開発を完了した。ポストアレイ構造はポスト列を2枚の導体平板で挟む構造であるので、鏡像原理により2次元問題として定式化できる。このことから、並列化コンパイラを用いて高精度に且つ実用的な時間内でポストアレイ導波路のシミュレーションが可能になった。 4.マイクロ波実験システムを使った伝送特性の計測(担当:前田): 従来からマイクロ波帯におけるモデル実験装置を用いてフォトニック結晶構造の測定を実施していたため、ポストアレイ構造の実験を順調に進めることができた。モデル実験装置には2枚の導体板でポスト列を挟み込む形状を採用した。数値制御旋盤を使って導体板の表面にマイクロメートルオーダーの誤差で加工した浅いガイド用の穴に円柱を立てることにより、種々の構造のモデル導波路を精密に作製することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究で考察した2次元平面導波路の内部に新たな円柱ポストを装荷して、2次元平面回路を構成する。新たに装荷する円柱ポストは2次元平面導波路の受動素子として働く。装荷する円柱ポストのサイズや材質は横方向への電磁界の漏れを抑えるために周期的に配列した円柱ポストのそれらと違っても構わない。装荷する円柱ポストの配置を工夫することにより、種々の受動回路素子を構成することができる。平成25年度は、これらの受動回路素子のうち(1)フィルタ回路、(2)フィルタ機能を持ったクランク回路、(3)方向性結合器 について考察する。具体的には、これらの回路素子の入出力特性を解析(担当:安元、前田)し、その結果をモデル実験(担当:前田)により検証する。 理論解析では、平成24年度の研究計画で述べた3つの手法がそのまま適用できる。新たに円柱ポストが加わっても、2次元モデルが適用できる限り、解析のアルゴリズムは同じである。解析の中心課題は、入出力関係の周波数特性である。フィルタの設計では、通過域における入出力特性の平坦化と通過域の両端での立ち上がり及び立ち下り特性の急峻化が求められる。所望の周波数特性を実現するために、新たに配置する円柱ポストのサイズや材質を最適化する必要がある。 実験面では、理論解析の結果を基にして、モデル回路を作製することが中心課題になる。この作製のため、福岡工業大学・大学院学生による実験補助を計画している。海外共同研究者として、引き続き、韓国の国立慶北大学の Vakhtang Jandieri 助教授の研究協力を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(168,959円)は、大学院学生の実験補助に対する謝金額(137,600円)が当初計画(300,000円)よりも少なかったために生じたものである。平成25年度の旅費は当初計画(250,000円)より増加が見込まれるので、この旅費の増加分に次年度使用額を充てたい。
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