研究課題/領域番号 |
24560439
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小原 仁 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50344768)
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キーワード | アクティブ測定 / 可用帯域 / サービス品質 / QOS / インターネット |
研究概要 |
本年度は本研究プロジェクトの2年目であり,前年度から開始した下記の4つのポイントについて研究の進展があった。 (1)筆者らが提案するアクティブ測定法の改良:筆者らが提案した,プローブ量は少ないが測定値がばらつくPTP方式と,比較的安定に測定が可能な従来のADR推定技術(Average Dispersion Rate)と組み合わせた新たな方式を提案した。また,シミュレーションによって,その妥当性を確認した。 (2)パケットペア方式の開発:PTP方式をベースとして,そのプローブ量(トレイン長)を最小とすると,POPP(Pair of Packet Pair)方式が得られる。ただし,プローブ量が少ないため測定精度の劣化が予想される。その測定性能をシミュレーションで確認した結果,PTP方式より精度が劣化するが(最悪30%程度),大まかな値を把握することはできることがわかった。 (3)ネットワークプロセッサを用いた実験:PTP方式のようにプローブの分散の変化より可用帯域を推定する方式では,パケットの到着時間を精度よく測定できることが必須である。一般のPCはOSの割り込み処理などによって,その時間精度は良くない。このため,Cavium社のパケットプロセッサ(OCTEON)を導入してプローブの送受信の実験を実施した。その結果,現時点では時間精度に大差がないという結果が得られた。これは最近のNICカードはGb/sイーサネット対応であり,性能が向上していることに起因していると考えられる。 (4)可用帯域とキャパシティの同時推定:PTP方式において,1回のプロービング処理で可用帯域とキャパシティの同時推定を行う方式を提案し,シミュレーションで動作確認を行った。この場合,キャパシティは可用帯域以上にバラツキが大きくなる性質があることが判明した。この問題を解決するための測定方法について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の4つのポイントの進行状況をそれぞれ下記に示す。それらの状況より,おおむね順調に進展していると判断した。 (1)PTP方式の改良:改良案を提案し,その効果をシミュレーションで確認できた段階であり,今後,実験ネットワークでの検証実験が残っているがおおむね順調である。 (2)パケットペア方式の開発:予定通り,シミュレーションで性能評価を行った。その結果はほぼ予想通りであり,それをどのように活用していくかが次のステップであり,おおむね順調に進展している。 (3)ネットワークプロセッサを用いた実験:パケットプロセッサの性能が思ったほどよ良くないという結果が得られた。ソフトウェア処理の限界と考えられ,今後はハードウェア(FPGA)による測定なども選択肢として考えなければならないことがわかった。この問題のため検討の見直しが必要であり,研究の遅れが見込まれる。 (4)可用帯域とキャパシティの同時推定:推定方式を提案し,シミュレーションで確認できたため,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)PTP方式の改良:キャパシティ推定機能を組み込んだプログラム開発を行い,PCにインストールして実験ネットワークでの動作確認を行う。また,前年度に作成したプログラムではプローブパケットの損失に対応できないなどの実用上の問題があったため,それらの改良を行う。 (2)プローブ送受信回路の設計:プローブの遅延時間を精度よく測定するためのタイムスタンプ付加機能(送信側)と,プローブ信号の時間間隔の測定機能(受信側)をPCの外付け回路として構成する。そのため,FPGAを用いたイーサネットインタフェース回路の設計を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費と人件費(RA経費)が予定より少なくなったため。 旅費として使用する。
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