研究課題/領域番号 |
24560441
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
宇野 亨 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80176718)
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研究分担者 |
有馬 卓司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20361743)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電磁界 / シミュレータ / FDTD法 / モーメント法 / 人体通信 |
研究概要 |
初年度にあたる本年度は下記2点の研究をおこなった.それぞれの成果を示す. ①FDTD法を用いた生体解析における精度の評価および高精度化手法の開発: シミュレータを開発するうえで重要な精度の評価を行った.FDTD解析においてこれまでは,波長の20分の1程度の空間離散間隔を取れば十分な精度が得られると言われていた.しかし,精密な解析を行った結果,生体解析においては,人体内部での波長に対して空間離散間隔を50分の1程度にしないと正しく解析できないことが分かった.これら成果より,生体を高精度に解析するには多くの計算機資源が必要であることが分かった.計算機資源を削減することを目的に,電磁界の空間変化をFDTD法に組み込む手法の開発を行った.この手法を用いることにより,人体通信で用いられる屈曲部を多く含む小型アンテナを,極端に細かな空間離散間隔を用いる事無く高精度に解析できることが分かった. ②モーメント法の高精度化手法の開発 本研究課題で開発を行うシミュレータは,少ない計算機資源で,高精度なシミュレーションが行えるものを目指す.そのために,モーメント法によるアンテナ解析の高精度化手法の開発を行った.モーメント法を用いてアンテナを解析する際,アンテナ全体をある長さの組み合わせに分割して解析するのが一般的である.この分割の仕方は,これまで均等に分割されていた.今年度は,厳密な定式化に基づいた,最適な分割法の研究を行った.この成果よりアンテナの給電部や端部において細かく分割することで高精度化できることが分かった.さらに開発した分割方法を,長さの異なるアンテナや,半径の異なるアンテナに対して適用しその有効性を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である今年度の進捗状況は,おおむね順調に進んでいると言える.以下にその根拠を示す. 本研究では,FDTD法,モーメント法,熱解析等を組み合わせたハイブリッドシミュレータの開発を行うが,今年度はそれぞれの手法の高精度化および特性の解明を行った.FDTD法については,精度と解析条件の定量的な評価を行ったことにより,高精度に解析できる条件を示すことが出来,有効なシミュレータの開発にめどがついたと言える.さらに,本研究では,開発したシミュレータを用いて人体通信に用いられる機器の開発を目指しているが,人体通信で用いられると考えられる,複雑な形状の小型アンテナを少ない計算機資源で高精度に解析できる手法の開発を行った.これにより,少ない計算機資源で高精度に解析できるシミュレータの開発にめどがついたと言える. モーメント法においては,計算機資源を増加させる事無く,高精度に線状アンテナを解析できる方法を開発したことにより,こちらも計算資源を増加かせる事無く高精度なシミュレータの開発にめどがついたと言える.
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今後の研究の推進方策 |
ハイブリッドシミュレータ開発に向けて,手法の開発および有効性を実験を用いて確認する予定である.実験については,人体を念頭に置くが,まずは球や直方体等の単純な形状のモデルを用いる予定である.このモデルは,人体と等価な電気定数を有する誘電体(人体等価ファントムと呼ばれる)を用いる予定である.また,アンテナとしては,特性のよく分かっている,ダイポールアンテナもしくはループアンテナを用いる予定である.さらには,どのようなハイブリッド手法が有効かについて,それぞれの手法同士を比較することにより,明らかにする予定である.また,シミュレータの汎用性は重要な要素であるので,金属・誘電体を統一的に扱うのに適したハイブリッドシミュレーション手法の開発を行う予定である. また,より良いシミュレータ開発のため引き続き,国内国外の研究動向も調査する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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