研究課題/領域番号 |
24560445
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤崎 礼志 金沢大学, 電子情報学系, 准教授 (80304757)
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キーワード | 超離散力学系 / 最大周期列 / de Bruijn 系列 / 記号力学系 / スペクトル拡散符号 |
研究概要 |
本研究の目的は,ビット誤り生起確率に関して最適な非線型力学系に基づくスペクトル拡散符号の実現,相関特性に関して最適な符号ファミリーの構成とその応用である. 自己相関関数は通信の同期を確立する重要な統計量であるが,非線形フィードバックシフトレジスタ(NLFSR)最大周期列の自己相関特性については,最も簡単なNLFSR系列であるde Bruijn系列の場合でさえ,上界だけしか知られていなかった.先に,本研究代表者は ,de Bruijn系列の自己相関値の下界を理論的に導出することに成功した.与えた下界は等号が成立する場合があるという意味において最良である(NOLTA, IEICE, 2011). 一方,相互相関関数は通信の多元接続干渉を知るのに重要な統計量である.de Bruijn系列のペアに対する相互相関関数の最悪の場合は,最悪のペアに対する自己相関値の上・下界で与えられる.本研究では,最悪のペア以外の場合の相互相関特性の上界を導出した.得られた相互相関特性の上・下界の理論値と先の自己相関特性の上・下界の理論値,および数値解析結果に基づき,両方の相関特性に優れた特性を有するde Bruijn系列のファミリーの効率的な構成方法を提案した(Proc. NOLTA 2012, 2012. 10). 以上は,上・下界,言い換えれば,最悪値についてである.最適な符号ファミリーを構成するためには,最悪のペア以外に対する特性が必要である.そのため,長さ2^nのde Bruijn系列の相異なる自己相関関数の個数を数え上げを試み,CR(complement reverse)系列に関するFredricksenの問題を部分的に解決した.すなわち,pが素数の場合,長さ2^{2p+1}のCR系列を構成的に求め,実現した(特2013-166128).その結果,長さ2^{2p+1}のde Bruijn系列の相異なる自己相関関数の個数の上界を導出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では,最適な符号ファミリーを構成するために,長さ2^nのde Bruijn系列の相異なる自己相関関数の個数の数え上げを試みた.陽に数え上げるためには,Fredricksenの問題を解かなければならないことを明らかにした.Fredricksenは,長さ2^nのde Bruijn系列に対するCR(complement reverse)系列を定義し,nが偶数のときにはそれが存在しないことを指摘した.さらに,n=3,5 の場合にその存在例を示し,nが一般の奇数の場合にCR系列が存在するか否かを問うた(SIAM Rev., 1982).これをFredricksenの問題という.これに対して,EtzionとLempelは,CR系列の特徴付けをすると共に,CR系列が存在するならば,nが奇数でなければならないことを示した(IEEE Trans. IT, 1984).本研究課題がde Bruijn系列に関する未解決問題に関連があるのは当初予想しなかった発見,収穫である. EtzionとLempelによるCR系列の特徴付け(1984)以来,Fredricksenの問題(1982)は未解決の難問である. 本研究では,30年以上未解決であったFredricksenの問題を部分的に解決した.すなわち,「研究実績の概要」で述べた様に,pが素数の場合,長さ2^{2p+1}のCR系列を構成的に求め,実現した.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」で述べた様に,Fredricksenの問題(1982)は未解決の難問であるが,本研究において,平成25年度にFredricksenの問題を部分的に解決した. 平成26年度は,上記Fredricksenの問題を完全に解決することに挑戦する.解決のための接近法は理論解析と数値解析である. 理論解析:Fredricksenの問題を解決するために,本研究代表者が開発した,記号力学系,グラフ理論,組合せ論に基づく独自の手法を発展させる.mが素数でない場合,長さ2^{2m+1}のCR系列を構成的に求め,実現するアルゴリズムを開発する. 数値解析:開発したアルゴリズムを実装し,m=2,3,4の場合に,長さ2^{2m+1}のCR系列を構成し,実現する.実現したCR系列の自己相関関数解析も試みる. Fredricksenの問題を完全に解決すれば,nが奇数のとき,長さ2^nのde Bruijn系列の相異なる自己相関関数の個数の上界が得られることになる. 平成26年度は最終年度である.最後に,ビット誤り生起確率に関して最適な非線型力学系に基づくスペクトル拡散符号の実現,相関特性に関して最適な符号ファミリーの構成とその応用に関して,3年間で得られた成果をまとめ,今後の研究課題を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究経費を有効に使用するのはもちろんのこと,研究遂行の支障にならない程度にできるだけ節約することに努めなければなりません.旅程の工夫による旅費の節約,割引率の高い消耗品の購入等により,998円だけ残額が発生してしまいました.小額であるため,物品(消耗品)の購入となりますが,喫緊に必要な物品が思い当たらなかったため,次年度に使用するのが適切であると判断いたしました. 物品(消耗品)費として有効に利用させていただきます.
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