研究課題/領域番号 |
24560446
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
平野 晃宏 金沢大学, 電子情報学系, 講師 (70303261)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 信号処理 / エコーキャンセラ / 前処理 / 音像定位 |
研究概要 |
複数の全域通過フィルタを縦続接続した前処理方式において、極位置の制御方式に関する検討を行った。従来法では、8個の全域通過フィルタを使用し、極の角周波数を等間隔に配置し、極半径のみを制御していた。偶数バンドと奇数バンドを位相の異なる周期関数で制御し、4状態を順に遷移する方式であった。今年度は、全域通過フィルタ数の変更、不等間隔配置の検討、極半径と角周波数を交互に変更する方式の導入を行った。従来の極位置制御では、全域通過フィルタ数の増減による改善はほとんど見られなかった。低域を細分化する不等間隔配置を検討したが、大きな改善は見られなかった。また、群遅延特性の時間変化を詳細に検討することにより、一部の周波数帯域で遅延特性の変化が小さいことが確認できた。 以上の検討により、極位置制御を改良する必要があることが確認できた。新たな極位置制御方式として、角周波数を固定して極半径を周期的に変化させる期間と、極半径を固定して角周波数を周期的に変化させる期間を交互に繰り返す方式を提案した。この方式では、全域通過フィルタを4個とした際に、従来法と比べて、係数誤差を-8dB低下させるまでに要する時間を約70%削減できた。収束特性の大幅な高速化を達成できたことは大きな成果であるが、さらに、極半径と角周波数の両方を制御する必要性が示されたことも重要であり、今後の改良に対する一つの指針を得ることができたと考えられる。 GPUベースの並列計算装置を搭載した高並列シミュレーション装置を導入した。性能評価において、複数の音声信号に対する集合平均を求めているため、逐次計算では長時間を要していた。性能評価の効率化が期待できる。 GPUを用いてRLSアルゴリズムを効率よく実装する手法を開発した。RLSの導入も実用化が現実的となる成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前処理による音質劣化の数値化は、部分的な検討に留まっている。群遅延特性の詳細な検討を行っている。各周波数帯の遅延変化と主観的な音質劣化の関係は見いだせたが、数値化には至っていない。しかし、遅延変化の少ない帯域が存在すると収束特性が改善できないことを確認できたことは大きな成果につながった。 複数の全域通過フィルタを用いる前処理方式の開発は、予定を前倒しして進行している。極半径に加えて角周波数も制御する方式の導入により、状態数を増加させる効果を確認も確認できた。 高速・高並列シミュレータの導入は予定通りに進行している。並列計算器を導入し、基本的な動作は確認している。複数の音声に対する収束特性の集合平均計算を容易にするツールも開発した。ツールの高速化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
複数の全域通過フィルタを用いた前処理方式については、極位置の制御方法をさらに改良していく予定である。現在は入力信号や収束状況とは無関係に制御している。入力信号のスペクトルを利用して音声歪を隠ぺいする方法を検討する。また、収束状況に応じて状態数を制御する方式も検討する。 直線位相フィルタを用いた前処理方式についても検討する。位相歪がないため、位相変化による音像のゆらぎは生じない。振幅変化による音像のゆらぎは生じると思われるので、その影響を含めて検討する。 並列計算システムは、さらなる高速化を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
音質の主観評価環境を改善する。主観評価においては、わずかな音質の変化を聞き分けるために、高品質な装置が求められる。複数人が同居する環境でも高品位な評価が可能なヘッドホンや小型スピーカを用いた場合と、本格的な評価実験用の装置の両面から検討する。
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