研究課題/領域番号 |
24560451
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
菊間 信良 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40195219)
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キーワード | アンテナ / MIMO / 到来方向推定 / 角度広がり推定 / 波源位置推定 / DOA-Matrix法 / SAGEアルゴリズム / 車載レーダ |
研究概要 |
本研究では,車載レーダ等において目標物からの反射波の到来角とその角度広がりを推定する方法について検討を行った.システム構成としては,MIMO (Multiple-Input Multiple-Output) アンテナに高性能到来波推定アルゴリズムを用いたものであり,大いに期待される技術である.平成25年度の具体的な成果を以下に記載する. (1) リニアアレーアンテナを用いて遠方から到来する到来波の到来方向と角度広がりを推定するための手法を考案し改善を行った.基本アルゴリズムは非探索型のDOA-Matrix法であり,これに最尤法の一種であるSAGEアルゴリズムを導入することにより,到来波の到来角度と角度広がりの推定精度が大きく改善されることが確認された. (2) 電波源の位置推定について検討を行った.波源がアレーアンテナの近傍にある場合,到来波が球面波であることを利用して波源の位置を推定するものである.近傍界DOA-Matrix法を用いることにより,波源位置を探索することなく効率的に波源の位置を求めることができることを示した.またSAGEアルゴリズムを併用することにより,複数の波源位置を精度良く推定することが可能であることも確認した. (3) 送信側にも複数のアンテナを利用したMIMOレーダの性能改善について検討を行った.アルゴリズムとしては,目標物の角度広がりも推定するために積分型のCapon法とMUSIC法を用い,比較検討を行った.その結果,どちらも良好に目標物の方向と角度広がりを推定できることが示され,積分型MUSIC法の精度が若干ではあるが高いことも確認された. (4) 波源位置推定用の2.4GHz帯モノポールアンテナから成る8素子アレーアンテナを製作し,ネットワークアナライザでアンテナの特性調整を行った.このアンテナは次年度の到来波推定の室内実験に用いる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アレーアンテナおよびMIMOアンテナに高分解能到来方向推定法を適用して複数の目標物の到来方向と角度広がりを精度良く推定することができている.角度広がり推定の精度の更なる改善,計算効率の改善,そして室内実験による検証が次年度の課題である.また近傍領域にある電波源位置推定についても従来法の改良を順調に行うことができ,期待した特性が得られている.電磁界解析ツールを用いた解析手法も確立しており,信頼性の高い検討を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
平面アレーアンテナを用いて近傍から到来する到来波の三次元的位置を推定する解析モデルを構築する.そして,このモデルを用いたパラメータ推定法を考案し,その特性を計算機シミュレーションにより検討する.基本アルゴリズムとしてはDOA-Matrix法と最尤推定法(SAGEアルゴリズム等)を用いる.波源位置を表すスペクトラムのピークを探す探索型の場合,位置の特定にかなりの時間がかかるため,非探索型のアルゴリズムの考案が望まれる.従って,非探索型アルゴリズム中心に検討を行い,MIMO技術を導入しながら改良を行っていく. また,解析用パーソナルコンピュータ上でのMATLAB計算機シミュレーションに加えて,2.4GHz帯で電波暗室内実験を行う.それ故,製作した送受信アンテナと周波数変換器を必要に応じて再調整し,測定のための治具を製作した後,実験的に近傍波源位置推定法の検証を行う.実験結果から,提案手法の有効性を確認し,問題点を探る.そして,提案手法の改良へとフィードバックする.さらに,金属板でコヒーレント電波環境をつくり,実際の環境を想定した実験を通して総合評価を行う.必要に応じて推定アルゴリズムの改良を行っていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
電波源の位置推定に関する推定アルゴリズムの改良に時間をかけ,室内実験の計画が遅れたため,次年度に繰り越した. 物品費としては,実験データ解析用のコンピュータを購入する予定である.また,アンテナ製作用の部品や材料等の消耗品を購入する.旅費は国内および外国の研究成果発表に使用する予定である.その他,印刷費,論文投稿料などが挙げられる.
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