本研究では、方向・指向性をキーワードに、物理層(アンテナ)、データリンク層(無線アクセス制御)、ネットワーク層(経路制御)の各要素技術とそれらの高度な融合により、有限な無線資源を有効活用できる通信制御方式とその実証機であるテストベッドの開発を目的としている。同時に、快適な車のネットワーク化を実現するために車々間・路車間通信へ応用することを目指している。 最終年度である今年度は、マルチホップ無線アクセステストベッドの屋外実験を行うことを最終目標に研究開発を進めた。まず、我々が開発した経路制御方式であるDORPを動作させるために必要な機構として、パケットの受信方向を前後に判別できる仕組みを開発した。昨年度までに開発したシステムでは端末の位置関係が既知という制約があった。この機構では、2本の指向性アンテナを端末の前後に装着し、各アンテナから得られるReceived Signal Strength Indicator(RSSI)の大小を比較して強いRSSIが得られたアンテナの方向にパケットの送信端末が存在すると判断する.実装にあたっては、各アンテナで得られたRSSIを比較して受信方向を判別し物理層とその上位層を仲介するプログラムを作成した。電波暗室での動作実験の結果、判別した方向の情報を経路制御で活用することで、DORPの経路制御で必要なテーブルを自律的に構築できた。次に、屋外実験をするために必要な特定実験試験局の免許を取得した。これにより実環境での動作検証が可能となった。本学キャンパス内道路において、4つの端末を用いて2ホップの異なる経路からなるトポロジでのデータ伝送実験を行った。比較対象としてAODVを用いた。その結果、屋外においてもパケットの受信方向を適切に判別し経路を制御できていることが確認された。また、AODVと比較して所望の特性が得られていることも確認された。
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