研究課題/領域番号 |
24560462
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
水波 徹 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00174029)
|
キーワード | 光ファイバ / 回折格子 / 光ファイバセンサ / 長周期グレーティング / 水銀ランプ |
研究概要 |
長周期ファイバグレーティング(LPG)の製作に関して、昨年度は照射に最適な低圧水銀ランプを選定し460μmの格子間隔をもつマスクを用いてLPGの製作を行ないグレーティング長を従来の20mmに代えて30mmとした。本年度は、最初にグレーティング長を30mmとした実験を、212μmの格子間隔をもつマスクを用いて行ない、照射時間の短縮が得られることを示した。また温度および歪みに対する感度の測定を行い、格子間隔460μmの場合に比べて高感度であることを示した。次に水素処理の効果を検討するため、ファイバガラス中の水素濃度を2/3とした場合、照射時間は1.5倍となることが分かった。 またLPGのセンサへの応用の研究として、面発光レーザを用いることを提案し実験を行った。面発光レーザは単一縦モードで発振するためスペクトル幅が狭く電流を変化させれば発振波長が変化し、波長読み出しに応用できる。実験は短周期のファイバブラッググレーティング(FBG)で行い、温度のセンシングが可能であることを示した。本年度は面発光レーザにエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)を加えることにより検出光のパワーの安定化ができることを示した。 さらに、低圧水銀ランプの光ファイバデバイスへのもう一つの応用として、第二高調波発生の高効率化の研究を行った。熱ポーリングにより二次非線形性を持たせた光ファイバにレーザ光を入射すれば第二高調波が発生する。その際、レーザを照射し疑似位相整合を行えば高効率になる。昨年度は、従来のKrFエキシマレーザに代えて水銀ランプを用いる実験を行ない、疑似位相整合の効果があることを確認したが、今年度はファイバに張力を加えることにより、KrFレーザ照射の場合に疑似位相整合条件の最適化を行うことができ、第二高調波出力が増大することを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、水銀ランプ等のインコヒーレント光源を用いて光ファイバに周期的な屈折率変化を書き込み、従来のように高価なレーザを用いることなく光ファイバデバイスを作成し、これを用いて各種光ファイバセンサおよびモード多重光通信へ応用することを目的とするが、低圧水銀ランプを用いた際の問題点である照射時間を改善するため、グレーティング長の増加と水素処理条件の改善が照射時間の短縮に効果的であることが示された。 またセンシングの光源として面発光レーザが有効であることが示された。また第二高調波発生の際の疑似位相整合の際にも従来のKrFエキシマレーザに代えて低圧水銀ランプが有効であることが示された。
|
今後の研究の推進方策 |
光ファイバのモードパターンを赤外線領域において観察できる装置を購入したので、これを用いて長周期ファイバグレーティングのモード変換特性を研究する予定にしている。また面発光レーザを用いた長周期ファイバグレーティングセンサの読み出しの実験を行う。さらに、第二高調波発生においては低圧水銀ランプの照射の場合に張力印加による疑似位相整合条件の最適化と出力増大を試みる。 最後に、これまでの研究を総括してインコヒーレント光源である水銀ランプの光デバイス製作へ応用の実用性を明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は就職担当を拝命したため、学生就職指導・企業面談・事務等に時間を取られ、研究の遂行に十分な時間を取ることができず、物品の発注が遅れ残額が生じた。本年度も就職サポート役として一部を担当するものの、研究の時間は増加するため、所期の成果を挙げられるものと考えている。 研究発表のため海外の学会に参加予定、また光計測器など備品類や、特殊光ファイバやレーザ用ガスなど消耗品、論文掲載料などに使用の予定である。
|