本研究の目的は1)3導体電力線がこの線路上を伝搬する通信信号に与える影響の把握,2)伝搬信号の漏洩電磁界に対する3導体電力線の抑制効果の明確化,の2点であった. まず,3導体電力線に於いて伝送線路として使用しないグラウンド線の影響と電力線に接続される電子機器の影響について検討を行った.検討を行うに当たり,電子機器を等価回路で表す方法を検討し,得られた等価回路に基づいてLCR素子を用いて電子機器モデルを作成した.次に,3種類の電子機器モデルが接続された配電モデルを作成し,通信信号の伝搬特性を測定した.また,回路網モデルを用いて伝搬特性の解析も行った.伝搬特性の測定結果と解析結果は良く一致し,回路網モデルを用いた解析法により伝搬特性の推定が可能なことがわかった.また,伝搬特性は,接続される電子機器の影響により周波数毎に大きく変化するが,デカップリング回路を挿入することにより,周波数依存性を小さくできることを示した.最後に,3導体電源線のグラウンド線として,真ん中の導体を使用した方が伝送特性への影響が小さいことを示した. 一方,漏洩磁界の検討では,さまざまな種類の電力線を用いて漏洩磁界の評価を行った. その結果,ケーブルの構造や被覆材料により線路定数は変化するが,コモンモード電流や漏洩磁界強度に与える影響は小さく.一つの式で,漏洩磁界強度を推定可能なことがわかった.また,検討に使用した直線の線路では,測定値と推定値の偏差をコモンモード電流については2dB以内に,漏洩磁界強度については5dB以内にできることがわかった.最後に,2線電力線と3線電力線を比較した結果,グラウンド線の多くの終端条件や配置条件において,3線電力線の方が,漏洩磁界強度が大きいことがわかった.
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