直交周波数分割多重方式は,地上波デジタルTV放送や無線LAN等の通信方式として実用化されると共に,最近では,次世代移動通信システムへの検討が積極的に押し進められている.また,高次変調,高符号化率の符号を併用することにより,更なる通信容量の向上を目指していることから,複雑に変調された信号を復調するには,受信システムのアナログ装置において,高精度なアナログ部品を使用する必要がある.このことが,受信端末機の回路規模を増大化させ,高電力消費・高価格化の要因になっている. 一方,近年の半導体技術の進歩によりデジタル信号処理技術は飛躍的に向上し,同技術に基づいたワイドバンド無線受信機のアナログ歪み補正技術は,費用対効果の高い解決策として,非常に注目されている.すなわち,ダイレクトコンバージョン方式受信機に安価なアナログ部品を用い,ハードウェア価格を抑えると共に,ベースバンド受信DSPチップにより,直流オフセットおよびI/Q不均衡等の回路歪みを補正するアルゴリズムを開発することにある. 本研究では,高速大容量ワイドバンド無線通信システムにおいて問題となる,アナログ回路歪みである周波数選択性I/Q不均衡をDSP技術により補正するものであるが,その有効性の検証については,計算機シミュレーションおよびFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いた回路設計により検証している.
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