研究課題/領域番号 |
24560470
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
太田 正哉 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70288786)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | OFDM / 帯域外漏洩電力 |
研究概要 |
本研究は,OFDM通信方式おいて送信信号の隣接帯域への漏洩電力(以下帯域外漏洩電力と称する)を抑圧する新しい手法を提案し,実用化に向けた性能評価を行うことを目的としている.提案法は窓関数を用いないN-continuous OFDMと呼ばれる手法の改善法であり,従来法において問題であった誤り率特性の劣化を大幅に改善できる. 本年度は主にコグニティブ無線に対する評価を行った.N-continuous OFDMの挿入シンボル電力はOFDMのチャネル数に依存せず,接続部分の滑らかさ(N次微分まで連続)に依存するため,チャネル数が少ない場合,相対的に挿入シンボルの電力が増加し,誤り率特性を劣化させる可能性が高い.特にコグニティブ無線では少数のチャネルを使用して通信を行う場合があり,その性能評価が重要である.ここではコグニティブ無線への適用を考慮して,まず,N-continuous OFDMを帯域毎に分割して適用する手法を提案した.次に,N-continuous OFDMと同様のプレコーディング法あるMemoryless N-continuous OFDMおよびSpectrum Sculptingについて,コグニティブ無線環境下での性能を実験的に評価した.さらにこれらの手法に,直交性を用いて誤り率を劣化させない方法を導入した手法について検討し,その性能を評価・改善した. 研究成果を平成24年電気関係学会関西連合大会(平成24年12月・関西大学)および平成25年電子情報通信学会関西支部学生研究発表講演会(平成25年3月・大阪電気通信大学)にて発表した(計4件).本研究に対して電気関係学会関西連合大会での発表に対して,電気関係学会関西連合大会より奨励賞を授与された(2012年4月).また電子情報通信学会関西支部より優秀論文発表賞授与の内定を受けた(2013年3月).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,コグニティブ無線への適用を考慮し,N-continuous OFDMを帯域毎に分割して適用する手法を提案した.本手法によって,in-bandにおける漏洩電力を大幅に抑圧できることを示した.また,本手法により誤り率の劣化が避けられないことを示した.次にこの対応策として,N-continuous OFDMと同様のプレコーディング法であるMemoryless N-continuos OFDMおよび Spectrum Sculpting,また,これらに直交性を用いた誤り率の劣化のない部分空間プレコーディングを組み込んだ手法について着目した.特にSpectrum Sculptingはコグニティブ無線におけるin-bandでの漏洩電力抑圧に優れており,部分空間プレコーディングにより理想的な漏洩電力抑圧が可能である.ただし,out-of-bandでの性能はN-continuous OFDMに及ばないため,そのハイブリッド法を提案した.本提案により,in-bandおよびout-of-bandの双方で高い漏洩電力抑圧が可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの提案法について,より詳しい性能評価を行う.直交性を利用した部分空間プレコーディングは誤り率の劣化はないが,ガードバンドを消費する.同様にガードバンドを消費するCancellation Carrier と呼ばれる手法が従来から提案されており,これとの比較が十分に行われていない.比較実験により提案法の有効性を検証する. またガードバンドを消費しないSpectrum Sculptingの誤り率改善としてSLMを導入した手法を提案する.SLMは送信前のシンボルの位相をランダムに回転させる手法で,帯域外漏洩電力を最も抑圧する位相回転を選択して送信する手法である. さらに以前提案したN-continuous OFDMにSLMを導入した手法に対して,FPGAにより回路試作し,その実装結果を評価する.本手法はSLMにより計算量の増大が懸念されるため,回路試作によりその評価が重要である.従来法との回路規模比較により提案法の性能を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は回路化に関する実験の準備を行う予定であったが,システムの調査や選定に時間を要したため十分にできなかった.次年度は回路化実験のための準備を遅滞なく進め,提案法の回路化およびその性能評価実験を行う.
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