研究課題/領域番号 |
24560472
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
高井 博之 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (20264963)
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研究分担者 |
橘 啓八郎 大阪学院大学, 情報学部, 教授 (80029090)
安田 元一 長崎総合科学大学, 情報学部, 教授 (10174509)
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キーワード | 通信方式 / 移動ロボット / アドホックネットワーク / 空間分割通信 / 並行送受信 |
研究概要 |
本研究は空間分割型移動ロボット相互通信のための通信プロトコルに関する研究である。指向性通信では信号を通信相手に向け送信する。異なる方向を向く送受信器には信号が入らないので、混信は起きないと考えた。 三角形の幾何学的性質を利用し指向性通信の混信を抑制する通信方式を検討した。ノードの空間分割数について考えた。正三角形の内角が60°である性質を利用して送受信器の受信範囲を60°以下に制限したとき、通信リンクのなす角を60°とすると1ノードで最大6本の通信リンクが並行して通信する可能性がある。ここで、隣接する通信リンクに混信を生じない送受信器の配置について考察した。全周360°に対し送受信器を40°間隔で9つ配置すると、送受信器の受信範囲が60°より小さければ、隣接する通信リンクが同じ送受信機の受信範囲に入らないので混信は起きない。また、混信を生じた場合、通信リンクのなす角は60°以下になったと考えられ、それらリンクの他方の端のノードの少なくとも1つが60°以上となるので、混信した通信リンクを調停することができる。 3ノードでつくるネットワークでの通信では内角が最大となるノードに調停させ混信を抑制できる。しかし4ノード以上でつくるネットワークでは、選ぶ通信リンクによって、できる三角形の形状が異なる。そこで、内角の2乗和を指標にした混信が少ないリンクを選択する方式の考案を得た。三角形の内角の和は180°で一定なので、内角の2乗和は最小3(60*60) =10800から最大180*180=32400の範囲の値となる。三角形の角2つと内角の2乗和を3次元直交座標系に写像すると範囲のある曲面となる。内角の2乗和が小さくなる通信リンクを選ぶことで、混信の少ないネットワークを選ぶことが出きると考えた。評価指標として使用可能か調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度(平成24年度)はネットワーク・シミュレータNS-2上への指向性通信と空間分割通信を模擬する機能の追加、および、空間分割通信の実験装置の設計、2年目(平成25年度)は実験装置の開発と実験データに基づくシミュレーション精度の向上を予定していた。初年度に行った、実験装置の一部(送信部)の設計に(信号強度の調整ができない・信号波形が崩れる)不具合があり、再設計と動作確認に時間を要したため、当初予定していたシミュレーション精度の向上に必要な実験データを(平成25)年度内に取ることができなかった。 実験装置送信部の回路設計にSPICEシミュレータを用いた。LEDやMOSFETなどのモデルに該当するものがなかったため、理想的なデバイスのモデルを用いた。このためシミュレーションと現実の回路との間で乖離を生じたと考えている。 送受信器の組込み制御用コントローラとして当初は8ビット・ワンチップ・マイクロコントローラの使用を考えていたが、使用できるメモリ容量の大きさ、プログラムの可読性や開発の容易さ等を考慮しより高性能な32ビット・ワンチップ・マイクロコントローラへの設計変更を行った。基本性能の向上と同時にRTOS等の搭載が可能になったため、より高度な機能を実装できる。RTOSとしてITRON系のTOPPERS_SSPの組込みを検討した。
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今後の研究の推進方策 |
空間分割通信の実験装置の開発について、当初は回路設計や基板設計、組立て等も自身で行うことを考えていたが、進捗に遅れが生じがちであることから、設計・開発作業は研究に必要となる基本的な機能の設計・動作の確認と仕様の決定に止める事とした。電気機械製造業に携わる研究協力者が参加していることから、開発作業は研究協力者を通じて企業に依頼し、研究遂行の効率化を図る。 実験装置送受信器の制御用コントローラを32ビット・ワンチップ・マイクロコントローラに変更し、RTOSとしてITRONを載せることとした。実験装置の制御用プログラムの設計・開発についても電気機械製造業に携わる研究協力者を通じて企業に依頼し、研究遂行の効率化を図る。標準化された開発方法を用いることで、ソフトウェア設計開発の効率化、研究遂行の効率化を見込んでいる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、平成25年度中に実験装置の光送受信器ハードウェアを完成し、平成26年度から通信制御プログラムの実装とプロトコルの開発することを考えていたが、初めに設計した光送信器のLED駆動光量調節回路が意図通りに動作しないことが判明した。光送受信器ハードウェアの再設計と動作確認に時間を要し、仕様確定が年度を跨ぐことになったため、次年度使用額を生じた。 実験装置に使用する部品等の多くは既に購入してあるので、次年度使用額の大半は当初計画の実験装置開発にかかる工作費用である。 電気機械製造業に携わる研究協力者が研究に参加していることから、研究協力者を通じて企業に実験装置工作を依頼し、研究遂行の効率化を図る。標準化された開発方法を用いることで、設計開発の効率化、研究遂行の効率化を見込んでいる。
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