研究課題/領域番号 |
24560472
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
高井 博之 広島市立大学, 情報科学研究科, 助教 (20264963)
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研究分担者 |
橘 啓八郎 大阪学院大学, 情報学部, 非常勤講師 (80029090)
安田 元一 長崎総合科学大学, 情報学部, 客員教授 (10174509)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 通信方式 / 移動ロボット / アドホックネットワーク / 空間分割通信 / 並行送受信 / 空間光通信 / 赤外線通信 |
研究実績の概要 |
本研究は、空間分割型移動ロボット相互通信のための通信プロトコルに関する研究である。指向性通信では信号を相手に向け送信する。異なる方向を向く送受信機には信号が届かないので、混信を生じないと考えた。 本研究では三角形の幾何学的性質を利用して指向性通信の混信を抑制する通信方式を検討した。送受信素子の受信範囲を60°以下に制限し、複数の送受信素子を1つのノードに円周状に外側に向け配置して360°の送受範囲を得る。3つのノードで通信網を作るとき、2つの通信リンクが作る角が60°より小さいノードでは混信が起きる。そして、残りのノードのうち通信リンクが作る角が最大のノードでは、常になす角が60°以上となり混信は起きない。それゆえ、なす角が最大となるノードは他のノードとの通信を調停できると考えた。 今年度はこの考案を確かめるための実験装置の開発に取り組んだ。45°間隔で送受信素子8素子を円周状に並べた赤外線送受信機を設計した。信号の到来方向の角度を得るため光入射角センサを受信素子に用いた。受信信号は通信距離の二乗で減衰する。信号処理方式を確認するため固定増幅率の増幅回路と対数増幅回路の2種類の受信信号増幅器を設計した。光入射角は通信信号パルスの受信信号強度を元に計算する。通信信号パルスのタイミングを計り、信号強度を捕獲する信号強度保持回路を設計した。2素子1組で開き角90°の扇状の信号強度保持回路4組を90°間隔で並べ、送受信範囲が360°となるように配置した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度(平成24年度)はネットワークシミュレータNS-2への指向性通信模擬機能と空間分割通信模擬機能の追加、および、空間分割通信の実験装置の設計、2年目(平成25年度)以降は実験装置の試作と基本機能の動作の確認、実験データに基づくシミュレーション精度の向上を予定していた。しかしながら、初年度に設計した実験装置の試作送信回路において、信号送信強度の調整ができないなどの不具合により手戻りが発生し、研究に若干の遅れを生じた。2年目は送信回路の再設計と動作確認に時間を要し、実験装置全体の動作確認には至らなかった。 3年目(平成26年度)初めに試作送信回路と試作受信回路の両方を使った通信実験を行った。固定増幅率の光入射角センサ増幅回路を用いた通信実験において、試作受信回路でも受信信号パルスの信号レベルが想定より小さく、受信信号パルスの尖頭を捕捉できない不具合が見つかった。光入射角センサの受信信号は通信距離の二乗で減衰する。固定増幅率の光入射角センサ増幅回路では、近距離では信号が飽和し遠距離では雑音に埋もれるなど動作範囲が想定より狭いことが確認された。3年目は受信回路の再設計と開発、対数増幅型光入射角センサ増幅回路の設計に時間を要し、実験装置全体の動作確認には至らなかった。 送受信器制御プログラムの開発や実験装置の実装、NS-2シミュレーション・プログラムの整備を研究協力者の応援を得て行っているが、先に生じた遅れを取り戻すまでには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
空間分割通信の実験装置開発について、当初は回路設計や基板設計、組立てなどをすべて自身で行うことを考えていたが、研究の進捗に遅れを生じていることから、実験装置に求められる機能・性能を実現する部分の設計・開発、動作の確認、仕様の決定に注力し、組立てなど比較的単純な作業については、研究協力者を通じて企業に依頼して、研究遂行の効率化を図る。 実験装置の制御コントローラには汎用の32ビット・ワンチップ・マイクロコントローラを用い、広く情報が公開されているリアルタイムOSを組み込む。実験装置の制御プログラムの設計・開発について、電気機械製造業に携わる研究協力者と協力し、研究遂行の効率化する。標準化された開発手法・開発ツールを用いることで、ソフトウェアの設計・開発の効率化・研究遂行の効率化を見込んでいる。 ネットワークのシミュレーションについて、ノードの数、通信速度とデータ量、空間分割の数、ノード当たりの並行送受信リンクの数など、模擬する内容を整理しパターン化した上で、通信ネットワークに強い研究協力者と協力してシミュレーション・シナリオの作成を作成し、研究遂行の効率化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、初年度(平成24年度)に空間分割通信実験装置の基本設計、2年目(平成25年度)以降は実験装置の試作と通信実験を予定していた。しかしながら、初年度・2年目に設計した実験装置の試作回路に不具合による手戻りが発生し研究に遅れを生じた。基本機能の動作確認、仕様の確定に重点を置いて研究を進めたため、実験装置の再設計に時間を要し、実験装置の開発、工作作業が年度を跨ぐことになり、次年度使用額を生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験装置に使用する部品の多くは既に購入を済ませている。次年度使用額の大半は実験装置の開発にかかる工作費用である。電気機械製造業に携わる研究協力者が研究に参加していることから、研究協力者を通じて企業に実験装置の工作を依頼し、研究遂行の効率化を図る。標準化された開発方法を用いることで設計開発の効率化、研究遂行の効率化を見込んでいる。
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