研究課題/領域番号 |
24560475
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
佐波 孝彦 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (60293742)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | MIMO / 空間分割多重 / OFDM / ダイバーシチ |
研究概要 |
本研究では,SDMを用いたMIMO-OFDMシステムにおいて伝送速度を下げずに,ダイバーシチ利得を得るための手法を確立することを第一段階としていた.平成24年度は,送信機におけるプリコーディング法について検討し,必要となるパラメータの導出とその最適性について数学的見地または実験的見地からの検討を行った.当初考えていた計画では,プリコーディング処理を時間領域信号で行うとしていた.しかし,検討の結果,OFDMの特長である,周波数領域の信号処理によりプリコーディングが実現可能であることが判明した.時間領域信号に重み係数を乗算するプリコーディング処理は柔軟性に欠け,得られるダイバーシチ利得にも限界があったが,周波数領域処理ではアンテナ間,OFDMのサブキャリア間で色々な組み合わせのダイバーシチを実現することが可能であり処理も簡単である. 平成24年度は次に示す三種類の組み合わせによるプリコーディング処理(本研究ではこれを相互重畳変調と命名した.)を検討した.(1) 同一アンテナ内の複数のサブキャリア間で行う相互重畳変調,(2) 異なるアンテナの同一サブキャリア間で行う相互重畳変調,(3) 異なるアンテナの異なるサブキャリア間で行う相互重畳変調である.検討の結果,これら三種類の相互重畳変調では,すべて同一の重み係数を使えることが判明し,またその最適重みは通信路によらず一定であることを実験的に明らかにした.次に,それぞれの相互重畳変調について,その特性を明らかにし,(3) のタイプの相互重畳変調が最も大きなダイバーシチ利得を得られることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,平成24年度の研究実施計画に記載していた内容のうち,送信機における複数のプリコーディング処理の検討,送受信アンテナが一つ(SISOシステム)の場合のプリコーディング重みの実験的検討など,そのほとんどに関しては予定通り進められた.しかし,数学的見地からの最適性の検討については,まだ完了していない.一方,平成25年度に実施すると記載していたもののうち,送受信アンテナが複数(MIMOシステム)の関するプリコーディング重みに関する検討は,先取りして行い検証が済んだ状態である.未完了の数学的見地からの検討については,文献調査により実施の目処が立っているため,平成25年度に実施できる予定である.以上より,本研究課題は概ね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降は,引き続きプリコーディング処理の数学的見地からの最適性を追求していくとともに,第二段階として初年度で得られた知見をもとに,各種システムに適用した際に必要となる技術的事項を解決していくことに重点を移していく.具体的には,平成24年度に検討したプリコーディング手法を用い,受信機構成まで含めたシステム全体の特性に関して検証を進めていく. 本研究で提案する相互重畳変調をMIMOシステムに適用した場合,受信機では重畳された信号を分離して処理する必要がある.本研究では,最尤検出を用いて復調を行うことを考えているが,その場合,計算量が大幅に増大すると考えられる.そこで,MIMOシステムにおける受信性能を明らかにしていき,各種処理量の軽減手法と受信性能のトレードオフも明らかにしていく.さらに,マルチユーザ環境に適したプリコーディング処理を検討していく.以上のことを数学的見地または実験的検知により検討していく予定である.また,これらの検討により得られた結果を,継続的に諸学会の大会や国際会議で発表し,そこでの議論を通じてさらに問題点を明確化し,理論を修正・改良していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で提案する相互重畳変調はその特性が通信路の状態と密接に関係するため,ハードウェアに実装しても実環境での測定は大変困難であることから,検証の大半は計算機による理論解析およびシミュレーションに頼らざるを得ない.さらに,本研究で扱うMIMOシステムにおいて,送信機における相互重畳変調処理そのものは負荷のかかる処理ではないが,受信機では仮想通信路まで含めた状態で最尤推定を行うこと,さらに,OFDMをベースにしたシステムでは,サブキャリア毎に処理を行う必要があることから,シミュレーションを行うには莫大な量の行列計算が必要となる.そこで,最新の計算機を1台,必要なソフトウェア,またバックアップ用のハードディスク等を購入予定である. 次に計算プログラムの実装やシミュレーションを行う上では,大学院生の研究補助が欠かせない.そこで,経費の20%程度を謝金とする予定である.また,本研究を遂行する上で,必要な情報収集を行ったり,研究成果を発表するために研究代表者が国内(地方),国外それぞれに年2 回程度出張するとし旅費および,会議参加費等に使用する予定である.
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