研究課題/領域番号 |
24560478
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
白井 宏 中央大学, 理工学部, 教授 (00196594)
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研究分担者 |
佐藤 亮一 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (00293184)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 移動体通信 / 電波伝搬解析 / 光線追跡 / SBR法 |
研究概要 |
本研究は、通信基地局の効率の良い配置や通信電波の正確な伝搬予測のために必要となる電波伝搬環境の予測を効率よく行う光線追跡アルゴリズムを開発し、その予測結果を高速かつ正確に行う解析・表示システムの開発を行うものである。 先行研究で得られていた伝搬解析プログラムは、携帯電話の通信基地局からの電波が、3次元空間内において、周りの建物にどのように反射しながら伝搬しているかを解析するプログラムであった。今年度、建物壁を通した透過電波の解析やエッジにおける回折波の効果を組み入れる方法を検討した。高層建物の壁は鉄筋入りのコンクリートで作られていることが多い。コンクリートは電気的に損失のある媒質とみなされるので、こうした媒質では電波伝搬が大きな減衰を受けるとともに伝搬方向が変化する。また壁内での多重の反射の影響も考える必要がある。こうした壁内における伝搬をどのように追跡すべきかを検討した。その結果壁内の多重反射効果を一次透過波に集約的に組み入れて計算する方法を採用し、計算時間を大幅に削減することが可能であることが示した。こうして建物内へ透過する伝搬波の光線追跡解析を行うアルゴリズムがほぼ完成した。また多重のエッジを回折する波の伝搬経路の高速な追跡手法について検討を行い、どの程度の多重エッジ回折波まで考慮すべきかの知見を収集した。 建物内の電波伝搬を追跡する場合には、建物の部屋の仕切り壁の材料やその位置情報等、部屋内の構造を効率的にデータとして蓄え、それに基づいて伝搬追跡する必要がある。こうしたデータベースの蓄積法についても検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度検討した内容のうち、建物壁を通した透過電波の解析アルゴリズムについては、壁内の多重反射効果を一次透過波に集約的に組み入れて計算する方法を採用し、計算時間を大幅に削減することが可能であることが示した。また多重のエッジを回折する波の伝搬経路の高速な追跡手法について検討を行い、どの程度の多重エッジ回折波まで考慮すべきかの知見を収集できた。透過波の解析アルゴリズムの中心となる部分が完成したので、おおむね順調に進展していると考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られた成果を基に、引き続き建物内の伝搬透過波の解析アルゴリズムの改良と多重回折波の組み込みについて検討する。この解析に当たっては、結果の妥当性を検討する他解法による比較も必要となる。こうした他解法についても調査する。 建物の透過波の計算には建築材料の電気定数を把握することが必要となり、どのような材料がどのくらいの電気定数をもっているかを反射・透過量から推定する必要もある。こうした電気定数の推定についても解析方法、実験方法共に検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在までに得られた研究成果は随時まとめて研究発表をしており、発表のための学会参加は、同様な研究を行っている研究者との意見交換もできるので、有益である。したがって研究発表の旅費を計上する。 今後の研究推進に関して、光線追跡アルゴリズムのプログラム開発や実験補助に関して、消耗品の購入と大学院生に謝金を計上したい。 建築材料に対する電気定数の同定に関しては、必要な測定機器はそろっているので、サンプル材料等、消耗品の購入が必要となる。
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