本研究は、通信基地局の効率のよい配置や通信電波の正確な伝搬予測のために必要となる電波伝搬環境の予測を効率よく行う光線追跡アルゴリズムを開発し、その予測結果を高速かつ正確に行う解析・表示システムの開発を行うものである。 建築物の壁によって反射・散乱された電波を逐次、電界強度を求めながら追跡する解析アルゴリズムを具体的なプログラムに組むことによって、簡単な形状をもつ建築物による散乱解析を行い、その結果を可視化した。建築物の壁内の多重反射効果を一回反射波や一回透過波に集約的に組み入れて計算する方法を採用し、計算時間を大幅に削減することが可能であることが示したが、それらの効果がどれほど最終的な合成界に必要か、確認する必要があった。また建物内へ透過する伝搬波の光線追跡解析を行うアルゴリズムが完成した。こうして作成したプログラムは、現在のところ、反射解析と透過解析が別々の形で解析されているので、これらの解析を統合し、ひとつのプログラムで実行できるようにする必要がある。 広域を電波伝搬解析するためには、まだ計算時間がかかるので、高速な追跡手法について検討を行い、光線追跡の間隔を粗くした場合に、観測されない光線をどのように補間することができるかについての知見の収集した。 現在のところ、建物はすべて方形をした場合についての解析に限定している。最近の都市部の高層建築物は方形とは限らず、丸みを帯びたものを含めいろいろな形状がある。こうした建造物は多角形近似をすることにより、現プログラムでも適用可能であるが、建物の表面曲率が大きくなると、精度が悪くなる可能性もあるので、曲率のある建物形状の扱いについてさらに検討する必要がある。
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