研究課題/領域番号 |
24560480
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
田中 將義 日本大学, 生産工学部, 教授 (30339270)
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キーワード | 高効率電力増幅 / 多値変調 / 非線形歪 / 空間重畳合成 / フェーズドアレイアンテナ / 32APSK |
研究概要 |
具体的内容 従来の3ビームの空間重畳合成法に加えて,システムの経済化が可能な2ビーム空間重畳合成法を新たに考案した.本システムに許容される重畳誤差を明らかにするとともに,本許容誤差を満足する空間重畳合成に適したアンテナ構成法,重畳合成時の消費電力を検討した.具体的には,(1)空間重畳合成時の種々の誤差における32APSK変調信号の伝送特性を解析し,許容利得誤差,許容位相誤差を決定し,アレイアンテナ設計目標を決定した.(2)解析により2ビーム間の利得誤差,位相誤差が小さく,空間重畳合成効率が高いアンテナ系構成法を明らかにした.(3)2ビーム空間重畳合成の実験系に使用する構成要素の調査,設計・製作 組み立て・製作法を検討した.(4) 4つのアンテナ素子から構成されるアレイアンテナを製作し重畳合成実験を行い妥当性を確認した.(5) 32APSK変調波作成の実験系を構成し,送信系の電力増幅器(HPA)の電力消費を実測した結果,従来方式に比べて,50%以上の低減が可能であることを確認した. (6)上記の検討結果の成果を国際会議で発表した. 意義・重要性 衛星通信では,占有周波数帯域の有効利用と送信機の省エネルギ化が重要である.周波数帯域の有効利用が可能な多値変調波は振幅変動が大きく,HPAの非線形特性による劣化を避けるために,動作点を下げて使用する結果,出力電力の低下と電力効率の低下を引き起こす.さらに,所望の出力を得るためにより高出力のHPAが必要となり,省エネルギ化が難しい等,システムの経済的構築が難しい欠点がある.本研究により,多値変調波を複数の振幅変動の小さい2波に分割し,個別にHPAの非線形領域で高効率電力増幅後に,空間でベクトル重畳合成する高能率伝送方式は,有限資源である周波数とエネルギを同時に有効活用可能な画期的な方式となり得る見通しを得た意義は大きい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りに実行すると同時に,さらに新たな構成法を提案,検討した. (1) 32APSK変調信号の空間重畳合成時の許容利得誤差,許容位相誤差を決定し,アレイアンテナ構成を決定した.(2)解析により3ビーム間の利得誤差,位相誤差が小さく,空間重畳合成効率が高いアンテナ系構成法を明らかにした.(3) 新たに2ビーム空間重畳合成型 32APSKを提案し,伝送特性,空間重畳合成時の許容利得誤差,許容位相誤差を明らかにした. (4)解析により2ビーム間の利得誤差,位相誤差が小さく,空間重畳合成効率が高いアンテナ系構成法を明らかにした.(5)上記検討結果を受けて,アレイアンテナを製作した. (6)2ビーム空間重畳合成型32APSK変調システムの実験系を構築し,送信系HPAの電力消費を実測し,従来方式に比べて,50%以上の低減が可能であることを示した. (7)上記の検討結果を国際会議で発表し実現性をアピールした.
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今後の研究の推進方策 |
空間重畳合成を用いた64APSK変調の実現性を検討する.具体的には,2つの8PSK波を空間重畳合成し,新たな64APSKの実現の可能性を検討する. (1) 空間重畳合成型64APSK変調信号の空間信号配置の最適化, (2)伝送特性を明らかにすると同時に,空間重畳合成時の許容利得誤差,許容位相誤差を明らかにする. (3)2ビーム空間重畳合成型64APSK変調システムの実験系を構築し,送信系HPAの電力消費を実測し,従来方式である64QAMあるいは64APSKの性能と比較を行い,空間重畳合成型64APSK変調システムの性能を明らかにする. (4)上記の検討で得られた成果を国際会議で発表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入を予定していた計測器を制御するソフトウエアの機能を詳細に検討した結果,本研究で要求する機能をカバーできないことが判明したため,購入を延期した. 計測器を制御するソフトウエアの次期バージョンでは,新機能追加により本研究で要求される機能をカバーでき,使用可能であることが判明したため,次年度に新バージョンを購入する予定である.
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