研究課題/領域番号 |
24560481
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
中野 久松 法政大学, 理工学部, 教授 (00061234)
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キーワード | メタマテリアル / 多重偏波放射 / 円偏波 / 直線偏波 / 1巻螺旋 / スパイラルアンテナ |
研究概要 |
誘電率と透磁率の両方または一方が負である材料を,メタマテリアルとよんでいる.本研究は,アンテナ単体で,右旋円偏波,左旋円偏波,水平偏波,垂直偏波を放射できる「多重偏波放射メタマテリアルアンテナ」を創造することにある.今年度は,前年度にほぼ達成した2重円偏波放射(右・左旋円偏波放射)の理論構築を見直した.さらに,直線偏波放射の理論構築を行った.研究結果を以下に示す. 1.2重円偏波放射:ループアンテナとスパイラルアンテナのアーム上にインダクタンス及びキャパシタンスを挿入すると,異なった周波数に於いて右旋偏波と左旋円偏波が得られることを理論・実験により確認した.新たに,挿入したインダクタンス及びキャパシタンスに損失がある場合を検討した.例えば,キャパシタンスに1.4オームの損失があった場合,「最大左旋円偏波放射に対する放射効率は,損失のない場合の22%から16%へと減少する」,一方,「最大右旋円偏波放射に対する放射効率は,損失のない場合の14%から8%へと減少する」ことがわかった.また,インダクタンス及びキャパシタンスの損失による放射パターンへの影響が少ないこともわかった. 2.直線偏波放射:2重円偏波放射の起こる周波数から離脱した周波数において,直線偏波放射を得るために,電流位相を検討した.スパイラル形状のアンテナとループ形状のアンテナでは,電流の位相定数βが0となる周波数で,直線偏波が放射されることを明らかにした.さらに,つぎの点も示すことができた.(1)角形スパイラルアンテナにおいては,アーム素辺数を変化させることにより,直線偏波の方位角を制御できる.(2)ループ形状アンテナにおいては,異なった周波数で,水平偏波と垂直偏波が得られる. 以上,得られた成果の一部はIEEEアンテナ伝播国際シンポジウムおよび日本電子情報通信学会全国大会などで公表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新材料(メタマテリアルとよばれる)の特性・概念を利用し,新しい機能・性能を有する電子機器の研究開発が,国内外で進みつつある.本年度は, 1.「メタマテリアル螺旋状アンテナ」が1給電アンテナであっても,異なる周波数において,右旋円偏波,左旋円偏波を放射できるとの前年度の知見を,実験により確証した. 2.インダクタンス及びキャパシタンスの損失を考慮して,利得特性,放射効率を定量化した. 3.電流位相を考察し,位相定数がゼロとなる周波数において,直線偏波放射が得られるとの知見を得た. 4.アンテナ構造の変化に伴う直線偏波の方向を定量化した.
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今後の研究の推進方策 |
残された問題点として,次の点を解決していく. 1.これまでに得られた螺旋状アンテナの右旋円偏波利得および左旋円偏波利得は異なる.今年度はこの利得を同一または同一に近い値にする.2.従来得られた放射効率は低い.この点の原因を究明し,放射効率を60%以上に高める.3.最大右旋円偏波利得、最大左旋円偏波利得の得られる周波数を制御する.このための新たな方法を開発する.必要に応じて,両円偏波周波数の分離度を高める,あるいは低める技術を獲得する.4.メタマテリアルヘリカルアンテナを新たに構築し、偏波多重性を考察する. 上記の理論結果を実験により検証していく.前年度同様,成果の一部をIEEEアンテナ伝播国際シンポジウムおよび日本電子情報通信学会全国大会などで発表する.
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