研究課題/領域番号 |
24560482
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 湘南工科大学 |
研究代表者 |
有村 光晴 湘南工科大学, 工学部, 講師 (80313427)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 情報理論 / データ圧縮 / 符号化レート / 冗長度 / 情報スペクトル理論 / 一般情報源 / FF符号 |
研究概要 |
本研究では情報源からの可変長出力系列集合を固定長の符号語集合に圧縮符号化するVF符号について主に理論的観点から研究を行っている.今年度は,VF符号の特殊な場合であるFF符号について研究を行った. 2010年度の研究で一般情報源に対する達成可能なFF符号の冗長度を定式化し,その値が情報源のエントロピースペクトルの漸近的な幅の最大値に一致することを示した.今年度はこれを発展させ,冗長度で見たときに漸近的に最適な符号のクラスを考え,これと符号化レートで見たときに漸近的に最適な符号のクラスとの関係を調べた. この結果,これら2つのクラスの包含関係が,古賀によって2009年度に示されたエントロピースペクトルの漸近的な最大幅の上界および下界に関する不等式で等号が成立するかどうかによって決まることを証明した.定常無記憶情報源や定常エルゴード情報源などのクラスにおいては,これら2つのクラスは完全に一致することが明らかだが,非定常情報源などの他の情報源クラスにおいてはこれらの関係は予想もされていなかった.また,これら2つのクラスが一致するための必要十分条件として,エントロピースペクトルの下端が収束するという条件が得られた.この条件は定常情報源より明らかに広いクラスであるため,非定常情報源の一部においても,情報源符号化の符号化レートによる最適性と冗長度による最適性が同等となることを意味している. さらに,エントロピースペクトルの上端が収束することの操作的な意味についても研究を行い,漸近的に最適な全ての符号の符号化レートが収束するための必要十分条件が,この状況となることを理論的に証明した. 以上の結果より,これまで定常情報源においては自明に成立するような状況が,定常情報源より広い情報源クラスにおいて必要十分条件となっていることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実施計画においては,平成24年度中にVF符号の解析および予備実験が終了する予定であった. 現在までに,VF符号の特殊な例であるFF符号についての成果が得られた.これは,VF符号に関する理論的な解析が予想以上に得られていなかった為である.そのため,平成24年度はVF符号の特殊な例であるFF符号に関する解析から始める必要があった.現在までにFF符号に関する十分な成果が得られたため,これに基づいてVF符号に関する解析を進めている.まず,可算無限アルファベット情報源をVF符号で符号化した際の最悪符号化レートおよび最悪冗長度についての理論的解析を進めており,平成25年度前半中にはVF符号の十分統計量によらない基本的な定式化ができる計画である.さらに,十分統計量を用いたVF符号の定式化にも着手しており,これについては平成25年度後半に成果が得られ,年度中に成果を公表できる予定である.以上で,平成25年度中には,理論面では計画に比べて遅れていた状況を取り戻すことができると考えている. 実装面においては,平成24年度中には着手することができなかった.これは上記の理論面の研究に時間がかかった為である.しかし理論的な成果が出つつあるため,平成25年度中には実装面においても研究を着手することができると考えられる. 以上より,当初の計画に比べて現在までの達成度は半年程度の遅れであり,今年度中に達成度の遅れを取り戻すことができると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,平成24年度に得られたFF符号に関する結果を一般化することにより,VF符号に関する理論的な解析を進める.平成25年度前半には,可算無限アルファベット情報源に対するVF符号の漸近的な性能を情報スペクトル理論を用いて定式化することを計画している.この結果は今までの研究で一部明らかになっているものの,その条件付けが不十分であるため再評価を行う.また,符号の最適性として冗長度を用いた評価尺度を用いる結果が得られているが,符号化レートについても評価を行なうことを考えている.これは,平成24年度の研究により,一般情報源においては符号化レートによる評価と冗長度による評価が必ずしも一致しないことが明らかになったためである.以上の方法で,一般情報源をVF符号で符号化する際の漸近的な性能,および情報源や符号に関する性質を,まずは従来知られている方法で明らかにすることを目指す. 平成25年度後半には,平成25年度前半に得られる結果を拡張して,VF符号の性能と漸近十分統計量との関連を理論的に調査することを計画している.この方法論は,FV符号においてはある程度の成果が得られているが,その際のキーとなる結果は,FV符号においては符号語長が漸近的に十分な統計量となるという性質である.VF符号においては,これが逆になり,情報源系列長が漸近的に十分な統計量となることが予想されている.そこで,VF符号に関して十分統計量の観点から理論的な定式化を行なうことで,これまで提案されているVF符号に関する性能評価を行なうことを考えている. また,実施計画から遅れている実装面についても次年度に開始する計画である.まずは,これまでに提案されているVF符号について,実際のファイルや乱数系列などを用いた実験を行なう計画である.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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