研究課題/領域番号 |
24560482
|
研究機関 | 湘南工科大学 |
研究代表者 |
有村 光晴 湘南工科大学, 工学部, 講師 (80313427)
|
キーワード | VF符号 / タンストール符号 / 十分統計量 / 個別冗長度 / ユニバーサル符号 / 情報源符号化 / データ圧縮 / 情報理論 |
研究概要 |
本研究では情報源からの出力である可変長の系列集合を固定長の符号語集合に圧縮符号化するVF符号について,主に理論的観点から研究を行なっている.今年度は,VF符号の圧縮限界について,符号化する系列集合のサイズが可算無限の場合の符号化レートの下界について主に研究を進めた. 以前,2012年度の研究において,VF符号の符号化定理のうち符号化レートの下界についての証明を行なった.VF符号においては,可変長系列の集合のサイズを大きくしたときの符号化レートの極限を評価する.この際の定理の仮定として,2012年度の結果では「可変長系列の集合における最短の長さが長くなるような符号であれば」という,符号に関するやや自然でない条件が課されていた.本年度はこの条件に関連して「符号化レートが有限であれば,可変長系列の集合における最短の長さは,可変長系列の集合のサイズを大きくした時にいくらでも長くなる」という補題を証明した.符号化アルゴリズムの圧縮性能を良くすることは符号化レートを下げることであるから,性能の良い符号化アルゴリズムにおいては,当然符号化レートは有限であるべきである.これは,以前の証明で課していた条件よりもリーズナブルな条件であり,VF符号の符号化定理としての証明が一般的なものとなった.以上の研究成果について,研究会で発表を行なった. また,2011年度中に学会発表していた,VF符号の部分クラスであるFF符号の冗長度に関する研究成果について,論文2本を投稿していたものが,本年度出版された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
VF符号に関する個別冗長度や個別符号化レートおよび十分統計量に着目して,その理論的な性能解析を行ないながら,新しい高性能なVF符号化アルゴリズムを提案するのが本研究の目的である.この目的のうち,個別冗長度を用いた個別符号化レートの理論的な成果が出ている. ただ,十分統計量に関連した結果がまだ出せていないので,その点においてのみ,やや遅れている. 一方,情報スペクトル理論を用いた理論的な成果として,VF符号のサブクラスとして解釈することのできるFF符号について,その符号化レートに関する最適性と冗長度に関する最適性の間の関係で成果が出た.これは当初の計画にはなかった結果であり,この部分については当初の計画以上に進んでいる. 全体として見ると,現在までの達成度はやや遅れている.
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度が最終年度であるので,主に十分棟計量を用いたVF符号の理論的な解析を行なう計画である.また,新しいVF符号を設計し,従来の符号と実験的・理論的に比較することを計画している. まず,十分統計量を用いたVF符号の理論的な解析については,以前FV符号に関する理論的な成果が得られているので,これをVF符号に関して適用することで,双対な結果が得られることが期待される.この点について解析を進める計画である. 次に,新しいVF符号の設計については,平成22年度にVF符号の一種であるTunstall符号について,その平均符号化レートの解析を行ない,従来とは異なる基準でもTunstall符号が漸近的には最適であるという結果が理論的に得られている.しかし,有限長にデータサイズを固定した場合にも,この新しい基準でTunstall符号が最適であるかどうかは明らかでなく,またTunstall符号とは別に最適な符号が存在するかどうかについても明らかにはなっていない.また,VF符号に関するこれまでの研究で,平均的な符号化レートだけでなく,符号化レートがあるしきい値を超えるオーバーフロー確率に関する評価も行なわれている.そこで,これらの基準で最適なVF符号を新しく設計し,実験的な評価を行なう計画である. 一方,平成25年度までに出た,FF符号に関する研究をさらに進め,FF符号とVF符号との関連についても理論的な解析を進める計画である.この点については,平成22年度に一部の結果が得られているが,その後の研究が進んでいない.そこで,FF符号で達成可能な冗長度とVF符号で達成可能な冗長度の下限についての比較を進める計画である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究によって得られた研究成果を国際会議に投稿していたが,採択されなかったので国際会議への参加を取りやめた.これににより,計画していた海外渡航旅費が使用できなかったため,残額が生じた. 平成26年度中に開催される国際会議へ1件の投稿を済ませており,採択されれば参加して発表する予定である.また,調査・研究のための国際会議への参加も別途予定しているため,平成26年度に海外渡航旅費として使用する計画である.
|