研究課題
基盤研究(C)
この一連の研究では,携帯電話等の市街地電波伝搬やセンサネットワーク等のランダム粗面上電波伝搬に代表される複雑系の電波伝搬問題に対して,簡単な1波モデルに2波モデルを組み入れた解析解を導入することによって,振幅補正値αと距離特性のオーダーβを適切に与えれば複雑な伝搬特性を精度よくまた簡潔に記述できることを明らかにしてきた.当該年度の研究では,この2個のパラメータを算出するアルゴリズムの開発について研究を進め,以下のような研究成果を得ることができた.市街地伝搬問題では,詳細な実験結果から得られた奥村カーブに基づく秦の実験式を使えば,これらのパラメータが解析的に得られること,一方ランダム粗面上伝搬問題では,電磁波の光学近似による近似的な数値計算から,これらのパラメータを与えることが可能であることを明らかにした.このことにより,任意の送信電力と受信感度を持つ送受信アンテナに対して,無線通信距離を容易に求める計算式を導出することが可能となった.その結果,複雑な伝搬路を持つ無線通信システムの基地局等の配置に関して,粒子群最適化法(PSO)を用いて,例えば福岡市のように湾岸に面した市街地の基地局配置について,数値シミュレーションを行うことが可能となった.これらの研究業績については,学術論文1編,国際会議7編,国内研究会4編となっている.
2: おおむね順調に進展している
市街地やランダム粗面等の複雑系電波伝搬問題を解析するに当たって,電磁界理論的な解析的な手法と問題の簡単化に向けた統計的な手法に加えて,他の研究者による実験的な手法を参考にして,簡便な電波伝搬問題の解析手法が新たに提案でき,また実用的な応用についても考察を進めることができた.次年度以降の研究に対して,その基本的な道筋ができたことは評価できる.またその研究業績として,学術論文1編,国際会議7編,国内研究会報告4編を公表することができた.初年度の研究の推進状況及び業績の両面から見て,「研究の目的」は十分に達成されたものと自己評価している.
市街地伝搬問題に関してはより実用的な観点から,都市部の建築物に対して公表されている統計量「建蔽率」と「容積率」を上手く取り入れて,簡便に伝搬特性を推定できる手法を提案することである.具体的には福岡市を対象にして,この研究を推進する予定である.数値計算には大学院学生の補助を計画している.一方,ランダム粗面上伝搬路問題では,不均質ランダム粗面の解析的手法に基づく粗面生成について考察し,これまでの数値解析だけの手法から一歩前進した理論を構築していく予定である.
直接経費50万円のうち,40万円を研究成果発表のための旅費,残り10万円を数値計算補助のための謝金として,次年度の研究費の使用計画としている.
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
2012 Seventh International Conference on Broadband, Wireless Computing, Communication and Applications
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http://www.fit.ac.jp/~k-uchida/