研究課題/領域番号 |
24560490
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
池田 思朗 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 准教授 (30336101)
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研究分担者 |
林 和則 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (50346102)
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キーワード | 通信路容量 / 適応変調方式 / レート歪関数 |
研究概要 |
本年度,理論に関しては,ふたつの方向で研究を行った.ひとつは通信路容量の問題,そしてもうひとつは通信路容量の問題に対して双対な問題であるレート歪関数に関する研究である. 通信路容量に関しては,林和則分担研究者と実際の適応変調方式へ適用する方法を議論し,学会発表および論文誌へ向けた数値実験を行った.この結果については26年度に開かれる国際会議に向けて原稿を準備した.また,これまでの結果についてはWITMSE2013に招待講演を依頼され,口頭発表を行った. レート歪関数に関する研究は昨年度に続き,奈良先端大学の渡辺一帆助教(平成26年4月からは豊橋技術科学大学,講師)と共同で行った.レート歪関数は,入力の分布と歪関数が与えられたとき,許容される歪の期待値の関数としてレートの下限を表すものである.たとえ入力の分布が連続であってもレートの下限を達成する通信路は離散分布,あるいは離散と連続の混合分布となる場合が知られており,我々はこうした現象がガンマ分布を入力分布とする場合にも生じることを示した.ガンマ分布を入力とする場合には許容される歪に応じて最適な通信路が離散分布,混合分布となるだけではなく,確率分布の台が変化することも示された.この結果を国際学会ISIT2013で発表した(口頭発表者は渡辺). またベイズ統計における事前分布の学習法の研究も行った.特に,推定の際に用いるダイバージェンスを広く用いられているKLダイバージェンスから変化させることによって,結果にどのような影響が現れるかについて渡辺氏と共同で研究を行った.この研究はレート歪関数の理論と深く関係している.この研究と前のレート歪関数に関する研究については論文を作成し,それぞれ論文誌に提出したが,現在査読中であり掲載は決定していない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の主要なテーマは,通信路容量に関する理論的な結果を適応変調へ応用することである.この研究に関しては,理論的な議論が終わり,適応変調への応用を目指した数値実験を行った.その結果,現在使われている適応変調の切り替え方式に対して,より簡便な基準による切り替え方式が有効であることが確かめられた.現在,この結果を論文としてまとめる段階にある.学会発表へむけた論文はすでに完成しており,26年度になってすぐに投稿した.論文誌へ向けた原稿は現在準備中であり,26年度前半に投稿する予定である.この研究課題に関しては当初の計画に比べ,口頭発表,論文発表の時期が少し遅れているが,おおむね順調に進展しているといえる. レート歪関数は,確率測度の最適化という観点から通信路容量と双対な問題として定義されているものであり,通信路容量と同様に情報理論における基本的な量である.しかし,確率測度の最適化という観点からの研究は海外ではいくつか見られるものの,国内では盛んではない.この点は通信路容量の研究と同様である.我々は本科研費の通信路容量という課題から出発し,レート歪関数という情報理論に関する基本的な問題に対する成果を国内外に発信し,こうした確率測度の最適化に関する問題の重要性を示している.本科研費を用いて,24年度には国内学会(SITA2012)で口頭発表を行い,25年度は国際学会(ISIT2013)で発表を行った.すでに論文誌へ投稿も行っている.この研究テーマについては当初の計画以上に進展しているといえる.ベイズ統計の事前分布の学習に関する研究についても,渡辺氏と共同で論文誌への投稿を済ませている.こちらに関しても当初の計画以上の進展である.
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今後の研究の推進方策 |
26年度は最終年度である.これまでの達成度はおおむね順調であり,本年度は研究成果を発表することが主な目的となる. 通信路容量の理論をもとにした適応変調方式への応用に関しては,26年度になって国際会議への論文投稿を行った.採録されれば口頭での発表を行う.また,この内容をまとめ,論文誌への投稿を本年度前半に行う予定である. レート歪関数,そしてベイズ統計における事前分布の選択法に関してもすでに論文誌への投稿を行った.今後,査読結果を見たのち,論文誌への掲載を目指して渡辺氏と議論し対応していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初,ISIT2013に参加する予定だったが,トルコの政情不安によって参加を見合わせたため,旅費の使用が減り,次年度使用額が生じた. 使用額については旅費として使用する予定である.国内,国外での会議への出張を予定している.
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