研究課題/領域番号 |
24560493
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
谷藤 忠敏 北見工業大学, 工学部, 教授 (50311527)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | FDTD法 / 指数時間ステッピング / 近赤外分光法 / 時間相関単一フォトンカウンティング / 脳機能計測 / 光拡散トモグラフィ / 光拡散方程式 / 時間領域法 |
研究概要 |
1.指数時間ステッピング(ETS) を用いた光拡散方程式のFDTD解析法の高精度化 光拡散方程式を用いて光学的に不均一な実際の生体中の光パルス伝搬解析を実現するためには、光拡散方程式の数値解法が必要不可欠である。申請者等が考案した光拡散方程式のFDTD解析は、大きな輸送減衰係数(mtr)を有する散乱体で解にゆらぎが生じるという欠点が有った。このゆらぎは、解析時間短縮のために、Yee格子サイズ(Dz)を大きくすると顕著になる。これを克服するため、光拡散方程式を時間のみに関する微分方程式と見なし、一般解と特解を解析的に求め、空間微分は差分で近似して、物理量を漸化式で計算するETSを用いたFDTD解析法を定式化した。散乱体境界条件もETSに再定義した。 ETSを110×110×60 mm3の3次元散乱体の光パルス伝搬解析に適用した。その結果、生体の平均的な値であるmtr =2 (mm-1)の散乱体をDz =2 (mm)で離散化すると、通常の解析では、光源から50mm以上離れた位置では解に大きなゆらぎが発生し、使用不可能なことが分かった。これに対して、ETSを用いるとゆらぎは完全に消失することが判明した。次にETSによる光パルス波形解析精度を検証した。mtr =3 (mm-1)の散乱体をDz =2 (mm)で解析した場合、光パルス波形の解析誤差は相対振幅が10-4以上で1%以下に抑圧可能なことことが分かった。これに対して従来法では、50%以上の誤差を伴う事が判明した。FDTD法を3次元散乱体の光パルス伝搬解析に使用する場合、解析時間はDz4に比例する。このため、従来法のDz =1 (mm)で数十秒要していた解析時間をDz =2(mm)のETSで数秒に短縮可能とした。 2.時間相関単一フォトンカウンティング測定系の性能確認 ピコ秒光パルスレーザを購入して、測定系の動作確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光拡散方程式のFDTD解析にETSを適用し、Yee格子サイズ(Dz)を拡大すると顕在化する解のゆらぎを抑圧し、解析精度を向上する上で有効なことを明確にした。これにより、3次元散乱体において、FDTD解析におけるDzを2mm以上に拡大することを可能とした。ヒト頭部は通常の部位と異なり頭蓋骨と灰白質の間に非散乱体である脳髄液が介在し、脳溝形状が複雑なため、Dzを2mmに拡大するには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
実際にヒト頭部の後方散乱光パルス波形を測定して、理論波形と比較してその精度を検証する。今後の推進策を以下に示す。 1.ヒト頭部の後方散乱光パルス波形測定 現有の時間相関単一フォトンカウンティング測定系を用いて、ボランティアを安静な状態で測定できるようにファイバプローブ等に改良を加える。ボランティアは学内から募り、毛髪等の処理が不要で思考中枢が集中している前頭葉の後方散乱波形を測定する。測定は脳回と脳溝の分布を意識して、光源入射及位置と光源-検出器間隔を変えて行う。測定に当たり平均照射パワ-は1平方ミリメートル当たり2mWという安全基準は遵守する。 2.ヒト頭部後方散乱光パルス波形の理論と実測の比較 ヒト頭部のMRI画像から、頭皮、頭蓋骨、脳髄液、灰白質厚み、脳溝間隔及び深さ等の平均的なヒト頭部モデルを作成する。またボランティアの前頭葉の湾曲形状も測定し脳髄液を介した頭蓋骨と灰白質の見通し距離を考慮した解析を行う。これらの結果と実測結果を比較してヒト頭部光パルス波形解析精度を吟味する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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