研究課題/領域番号 |
24560493
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
谷藤 忠敏 北見工業大学, 工学部, 教授 (50311527)
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キーワード | FDTD法 / 近赤外分光法 / 時間相関単一フォトンカウンティング / 拡散光トモグラフィ / 光拡散方程式 / ヒト脳 / 脳髄液 / 脳溝 |
研究概要 |
「近赤外分光を用いたヒト脳診断理論の高性能化と実証」に関して以下の成果を得た。 1.現実的なヒト頭部モデルの光伝搬解析・・筆者等が定式化したFDTD法に、脳溝と頭表の屈曲を考慮したヒト頭部モデルの後方散乱光パルス波形(以下光パルス波形と略称する)を解析する機能を付加し以下を明確にした。(1)脳溝の光パルス伝搬特性への影響・・非散乱体である脳髄液で満たされている脳溝中で光は直進するため、脳溝を考慮すると光源・検出器間隔(d)が大きくなるほど遅延時間が減少する。このため、実際は脳溝を考慮することが不可欠なことが判明した。(2)頭部屈曲の光パルス伝搬特性への影響・・実際の頭部は屈曲しており、これは脳髄液を介した頭蓋骨と灰白質間の光結合に大きな影響を及ぼす。このため、光結合の可視距離(lv)を用いて屈曲の影響を解析するFDTD解析プログラムを作成した。 2.ヒト頭部光パルス波形測定・・実験内容を説明して募った学内の3人のボランティアの頭部の光パルス波形を時間相関単一フォトンカウンティング法により測定した。測定は光入力の安全基準である10mW以下とした。光パルス波形から算出した平均遅延時間は、3人のボランティアでばらつきが視られた。ボランティアの頭表形状を測定したところ、ばらつきは前項(2)で述べたlvと大きな相関があることが分かった。 3.ヒト頭部光パルス波形理論値と実測値の比較・・頭表形状と平均遅延時間の関係が明確に確認された一人のボランティアについて、頭表と脳組織の光吸収及び等価散乱係数を推定した。推定は理論及び実験光パルス波形の自乗残差最小値を探索する共役勾配法を用いた。その結果、時間領域法を用いると頭表と脳組織の光学パラメータを深さ方向に分離して推定可能なことが分かった。このパラメータを用いて推定した光パルス波形の誤差はd=20~40mmに亘り誤差は20%以下に留まることを明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、筆者等が定式化したFDTD解析で実際のヒト頭部の光パルス波形を予測することにある。現在まで2次元モデルではあるが、脳溝と頭部の屈曲を考慮したFDTD解析と実測値は良い一致を示すことが初めて明らかになった。これにより、本研究のベースとなっている光拡散方程式と光輸送理論を組み合わせたヒト頭部光パルス伝搬理論及び、散乱体と非散乱体境界で新たに考案した境界条件や波源条件、等の妥当性が検証されたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、頭表の屈曲がほぼ一様と考えられる側頭葉の光パルス理論値と実測値の良い一致を確認した。今後は、実際の頭部屈曲を考慮した解析法を定式化して、頭部全体に亘り解析可能な理論へと高度化を図る。
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