研究課題/領域番号 |
24560495
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
貝原 俊也 神戸大学, その他の研究科, 教授 (70289114)
|
研究分担者 |
藤井 信忠 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (80332758)
|
キーワード | システム最適化 / 生産システム / マルチエージェントシステム |
研究概要 |
本研究では,製造業の海外移転に伴い,急速に大規模・グローバル化が進んでいる生産・物流システムの高効率化の実現を目指す.その際,まず社会科学が一般に追求する頑健性や効率性を有した社会的交渉メカニズムを内包する社会指向型マルチエージェントシステムの構築を行い,計算機実験によりその特性評価を行う.次に,実生産・物流システムを模した物理モデルであるモデルプラントを用いて提案法の具現化に関する方法論を明らかにした後,その有用性についての実証的検討を行う.これらの取組みにより,大規模生産のさまざまな局面で介在する人間(意思決定主体)の存在を前提とした,新しい「人とシステムの協調」による効率的で無駄のないシステム計画や運用のための方法論を構築し,大規模生産におけるその有効性を検証することが,本研究全体での目的である. そこで本年度は,昨年度に得られた結果を基に,社会指向型マルチエージェントシステムの方法論確立に取り組むとともに,ある程度進んだ部分について,生産システムの物理モデルであるモデルプラントを利用し提案法のプロトタイプシステムの構築を試みた.その際,我々の現有するモデルプラントはあくまで小規模なFA工場の物理モデルであるため,さらに高速PC群やRF-IDといった最新のセンサ・アクチュエータ・制御機器を実装し,より精緻で大規模な物理モデルを構築した.またこのモデルプラントは,完全な自動制御による運用が前提であるが,ここでは,人とシステムのインタラクションを可能とするために,生産システム内に自動制御から切り離された構成要素を設置し,人間のヒューリスティックに基づく運用方式の実装が可能となるような機能拡張を構築した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究課題であった社会指向型マルチエージェントシステムの方法論確立については,組合せオークションベースのシステム最適化アルゴリズムによるエージェントの定式化が終了し,精緻で大規模な物理モデルであるモデルプラントの構築については,高速PC群やRF-IDといった最新のセンサ・アクチュエータ・制御機器の実装を完了させ,当初の予定どおりに進んでいる.また,昨年度からの継続課題として,スパコンを利用した超並列計算プログラムも完成し簡易実験によりその有効性が確認できており,実システムを対象とする高速なエージェント間交渉解の導出が可能となる目処をたてることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,モデルプラントを社会指向型マルチエージェントシステムと統合化するために機能の拡張を行いながらさらなる規模の拡大を目指し,モデルプラント内センサ信号のリアルタイムでのモニタリングや人の意思決定アルゴリズムとの統合化,および生産管理システムからの物流制御指示などのインタフェース部等の設計・開発を行う.また本研究の最終年度として,提案手法に関し実生産システムにおけるフィージビリティスタディを視野に入れて検討を進める予定である.さらに,本研究のまとめとして,人とシステムの協調による効率的で無駄のない資源配分メカニズムに基づいたシステム計画や運用のための社会指向型マルチエージェントシステムによる方法論を具現化・体系化し,大規模生産におけるその有効性について得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
生産システム環境構築用モデルプラントシステムのコントローラやRF-IDモジュール機器の価格が当初の見積りよりも少ない数量で実装できたため,物品費を低くおさえることができた.一方,成果発表のための出張の機会が多く発生し,出張費用が当初の計画よりもやや大きくなった. 社会指向型マルチエージェントシステム計算用クライアントPCについて,計算効率を向上させるために高級仕様を検討するとともに台数を増やし,今回発生した次年度使用額を使ってシステム構築を行う予定である.
|