研究課題/領域番号 |
24560499
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村田 純一 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (60190914)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 最適化 / 不確定性 / リスク / 機械学習 / 再生可能エネルギー |
研究概要 |
本年度の成果は次の二つである.(1)多段決定問題において,利用できる選択肢が確率的に変動する問題を対象とし,この変動によるリスクの主観的評価を組み入れて意思決定を行う強化学習法を開発し,その成果を学会および論文で発表した.(2)応用対象として,再生可能エネルギー出力の変動を考慮した発電機運転計画問題を取り上げ,本研究に即した定式化を行ない,この問題を解く予備的な手法を開発し,学会において発表を行った. (1)においては,変動が発生する確率がどの程度高ければその発生およびそれによる悪影響を懸念するかに個人差があることに着目し,これを主観的確率として表現することによってリスクを評価する方法を考案した.このリスクは本来の効用を減少させる.この主観的なリスクによって修正された効用を最大化する解を,強化学習を用いて得る方法を開発した.この方法において,意思決定によって決定した選択肢を実行している最中に得られた新たな情報を,その後の意思決定の修正に使う方法も考案した.また,同時に,変動の発生確率の推定も行う方法も構築した.これを,例題として街路における最適経路探索問題に適用しその有効性を確認した. (2)においては,電力の需要と供給を一致させ,かつ発電コストが最小となるように発電機出力を時系列として決定する問題を取り上げ,電力需要の予測のはずれと電力系統に接続された太陽光発電設備の出力予測のはずれを変動ととらえ,変動を含む多段決定問題として定式化した.この問題に対し,複数時点における意思決定の相互影響が弱い場合に限定して,解を得る予備的な解法を開発し,例題を用いてその有効性を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
利用可能な選択肢が確率的に変動する多段決定問題の解法については,平成24年度に計画していた内容がすべて達成でき,雑誌論文と学会において成果を発表した. 再生可能エネルギーによる発電出力の変動への対処に関する応用については,計画していた問題の定式化を行った他,予備的な解法も開発することができた.この成果を学会において発表した.
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今後の研究の推進方策 |
まず,変動のリスクの評価方法の拡張を行う.現在までに開発した方法では,利用可能な選択肢の変動,すなわち選択肢に関する制約条件の変動を対象とし,そのリスクを,意思決定者が変動が起こると思う主観的確率で表現している.このため,リスクは制約条件への影響を中心とした評価になっている.一方で,変動は解の良しあしを評価する目的関数の値にも影響を与える.この影響を反映したリスクの評価方法を確立する. 次に,制約条件への影響と目的関数への影響を統合したリスク表現を開発する.加えて,これらの統合が困難な問題を想定し,統合せずに多目的最適化問題として扱う方法を考案する.多目的最適化問題では,一般に複数のパレート最適解が存在し,この中から意思決定者の考えに基づいて一つの解が選ばれる.本研究で扱う問題は,多目的最適化問題とし取り扱う場合,元来の目的関数,変動による制約条件への影響のリスク評価,変動による元来の目的関数への影響のリスク評価の3目的の問題となる.これらのいずれをどの程度重要視するかは意思決定者が判断するものとして解を得る方法を開発する. 上記が達成された後,変動のリスクを考慮した動的計画法および強化学習を発展させる.多目的最適化問題として取り扱う場合,3目的のいずれをどの程度重要視するかを定める必要がある.これは意思決定者の考えが反映されるが,その決定を意思決定者に任せてしまうと意思決定者の負担が増大する.そこで,意思決定者が各目的を重要視する程度を何らかの方法で把握し,それに基づいて一つの解を求める方法を開発する. また,上記と並行して,再生可能エネルギー発電出力の変動を考慮した発電機運転計画問題について,複数時点における意思決定の相互影響が強い場合にも適用できる解法を開発する.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は,多段決定問題に関する書籍の購入,この研究実施のために平成24年度に購入したソフトウェアのライセンス更新,研究成果発表のための旅費および学会参加費に充てる.
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